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「そうだな…読書が好きというか、そういった頭に知識を入れる行為が好きなんだ。」
クロロがそう答えると、彼女は「へぇ」と感心したように見つめてきた。
彼女の赤い瞳に店内の照明が反射していた。
ふとクロロは緋の眼のことを思い出す。
昨年の末ぐらいに盗りにいった、世界七大美色にも数えられるクルタ族の瞳だ。
それはそれは綺麗なものだった。
クルタ族の瞳は確か、怒りを感じることで眼が一時的に赤く変化する。
彼らの瞳は死してなお、その燃えるような意志を感じさせるのだ。
彼女の瞳は違う。
例えるなら、夕日。
地平線に静かに沈んでいく太陽は、昼間のどの時間帯よりも強く輝きを放つ。
その一瞬を切り取って収めたような瞳。
掴めそうで掴めない、瞬間の眩しさ。
そういった類の美しさを秘めていた。
「それ、何となくわかる気がするなー…」
Aがそう呟くまで、見つめ合っていたにも関わらず、クロロの思考は彼女の瞳に吸い込まれていた。
「私は頭動かしてるって感覚が好きなの。だからしょうもないことをグルグル考えこんでみたりする。でもそしたら色んなことが余計に分からなくなるんだけどね。でもそうして悩んでると……んー、なんて言ったらいいんだろうな…」
彼女は半分ほどに減ったコーヒーをスプーンでくるくる混ぜる。浮いているホイップが回った。
似ている、とクロロは胸の中で思う。
彼女と俺はきっと根本的な何かが一緒だ。
「…そういうことをしてる時に生きてるなって感じる。俺は。………生存に必要ないことを考えたり悩んだりするのは人間だけだと思うんだ。」
店内のBGMがピアノジャズから、クラシックへと変化した。弦楽器の音色が重厚に音楽を奏でる。
「ただ本能のままに、食べて、食べるために殺して、生きるためだけに頭を使うなら別に人間に生まれなくてもいい。思考は人間の特権なんだ。逆に人間として生きるためには深く思慮する必要がある。」
だから俺は思考をするんだ。
自分のこと、この世界のことを。
そう続けようとしてクロロはハッと口を閉じた。
今、自分が言おうとした事は自分の本質だ。
クロロは、自分の行動の根本にその気持ちが大きく作用していることを自覚している。
不自然にどもったクロロにAは不審がることなく、フッと微笑んだ。
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ぽへみあん(プロフ) - ミヤナさん» ありがとうございます!私も久石さん大好きです(≧∇≦*)更新遅くて申し訳ないのですが、これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月25日 21時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤナ(プロフ) - とっても素敵な作品ですね!私はクラシックはあまり詳しくないのですが、久石譲さんの曲は好きです!とっても素敵ですよね。応援しています! (2019年9月24日 23時) (レス) id: 7d8442c23e (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 林 香織?さん» ありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです♪。私の大好きな曲ばかりなので聞いていただけて幸いです。ぜひクラシックに興味を持っていただけたらなと笑!更新頑張って参ります…これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月17日 14時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
林 香織?(プロフ) - ぽへみあんさん» 初めまして!団長の不器用さと主ちゃんの優しさに虜になりました!出てくるURLを聴きながら小説を読みこんな曲か…と読んでおりました(笑)作者さんのペースで更新頑張ってください! (2019年9月11日 23時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 死体さん» ありがとうございます!そんなそんな…(--;) 私なんてまだまだですが、そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年8月20日 10時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽへみあん | 作成日時:2019年7月21日 0時