5 ページ7
ピチョン、ピチョンと水が滴る音がする。
点滴の音だろうか。
沈んでいた意識がだんだんと浮上してくる。
うっすら目を開けると、病院の白い天井ではなかった。
広がるのは空だった。
プラネタリウムでしか見たことがないような満天の星空が、仰向けに倒れるAの上に広がっていた。
天の川がくっきりと浮かんでいる。
静かに見つめていると時折流れ星が流れた。
何故ここにいるのか、そんな疑問も忘れてAはその美しさに感嘆の吐息を漏らした。
まるで掴めそうなほど近い場所で星が輝いている。
手が届くのではないか。
そう思い、Aは手を伸ばす。
一掴みでも、自分のモノに出来たらいいのに。
自身の感傷的な考えに少し恥ずかしくなって微笑んでからAは気づいた。
今空に伸ばした手は、右手だったのだ。
思わずガバッと身を起こし、Aは右足を確認した。
事故で失った右足。
それが今はそこにあった。
恐る恐る足の指を窄めたり広げたりする。
私の足が、動いてる。
その足をさする右手も問題なく機能していた。
「やっっったぁぁぁぁぁぁぁあー！！」
Aは腹の底から巻き起こる歓喜に任せて大声を出した。
嬉しい。私の足が、手が動く。
足に反動をつけ勢いをつけて立ち上がると、そこは小高い丘の上だった。
周りは鬱蒼とした森に囲まれている。
この丘だけが芝生に覆われ、森林を見渡すことができた。
明かりはなく暗闇であるはずなのに、何故か目は問題なく全てを捉えていた。
Aはその場で軽く2、3回ジャンプをすると、弾かれたように丘を駆け下りて行った。
体がびっくりするほど軽かった。
こんな風を切るように走ったのは初めてだ。
これは夢なんだろう。
患者服がはためく。
Aはそのまま森に入った。
すごい勢いで木々が通り過ぎていく。
裸足だがそんなことなどどうでもいい。
このままどこまでも行ける気がするくらい、私は今エネルギーに溢れていた。
これは夢だ。
あの世に行く前に見るつかの間の夢。
このまま、どこまでも走り続けれたらいいのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽへみあん(プロフ) - ミヤナさん» ありがとうございます！私も久石さん大好きです(≧∇≦*)更新遅くて申し訳ないのですが、これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月25日 21時) (
レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤナ(プロフ) - とっても素敵な作品ですね！私はクラシックはあまり詳しくないのですが、久石譲さんの曲は好きです！とっても素敵ですよね。応援しています！ (2019年9月24日 23時) (レス) id: 7d8442c23e (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 林 香織?さん» ありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです♪。私の大好きな曲ばかりなので聞いていただけて幸いです。ぜひクラシックに興味を持っていただけたらなと笑！更新頑張って参ります…これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月17日 14時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
林 香織?(プロフ) - ぽへみあんさん» 初めまして！団長の不器用さと主ちゃんの優しさに虜になりました！出てくるURLを聴きながら小説を読みこんな曲か…と読んでおりました(笑)作者さんのペースで更新頑張ってください！ (2019年9月11日 23時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 死体さん» ありがとうございます！そんなそんな…(--;) 私なんてまだまだですが、そう言っていただけるととても嬉しいです！これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年8月20日 10時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽへみあん | 作成日時：2019年7月21日 0時
