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支払いを済ませ店を出ると、すぐ前でクロロが待っていた。
クロロが背負ってくれているチェロケースを受け取ろうとしたら「広場までは持つ」と断言されてしまったのでお言葉に甘えることにする。
夕日は半分ほど沈み、東の空が真っ赤に染まっていた。
「もう夕日が沈む時間なんだ…」
二人で並んで大通りを歩きながらAはクロロにそう話しかけた。
「確かに、日が落ちるのが早くなったな。もう冬が来るのか。」
「クロロはここの冬初めてだったっけ?私は早く冬になって欲しいんだよね。雪が見たいし。」
「あぁ。どれくらい積もるんだ?」
「結構積もるよ。確実に腰あたりまでは積もると思う。」
「なるほど、それはすごい。『スノーシティ』と呼ばれるだけあるな。」
クロロが口にした『スノーシティ』とはこの街の名称である。
この地域の冬は厳しく、Aが暮らす森も街の石造りの家もシンシンと降り積もる雪に覆い尽くされてしまう。
その時期に訪れた人々が街を見て『スノーシティ』と呼ぶようになったのだ。
「積もる前に帰ってきなよ。バスとか動かなくなるし。」
「そうする。」
楽しみだな、とクロロは呟いた。
「雪をあまり見ないから」
「ここの雪は綺麗だからねー…」
中央広場に着くとクロロはチェロケースを下ろした。
そのチェロケースを受け取りながら、Aは頭一つ分くらい高い位置にある彼の顔を見上げた。
「元気で過ごしなよ。」
そう言った自分は少し悲しげな顔をしていたのかもしれない。
クロロはクスリと笑うと、おもむろに手を伸ばしAの頭を撫でた。
「Aもな。」
少しひんやりとした大きな手だった。
驚きで体が一瞬固まったが、自分の頭をすっぽり覆う手にAも自分の両手を重ねる。
そうするとだんだんと彼の手は温かさを増していった。
「…またね。」
「またな。」
彼の手から自分の手を離すと彼も手を下ろした。
名残惜しそうにAは一度クロロの瞳を見遣るとすぐさま体の向きを変え、北側の通りへと足早に向かった。
クロロはきっと、いつも通り自分の姿が見えなくなるまでこちらを見ているのだろう。
頭上と手に先程の温もりが残っていた。
それを振り払うようにAは通りを駆け出した。
Aがクロロとこうして触れ合ったのはこれが初めてのことだった。
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ぽへみあん(プロフ) - ミヤナさん» ありがとうございます!私も久石さん大好きです(≧∇≦*)更新遅くて申し訳ないのですが、これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月25日 21時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤナ(プロフ) - とっても素敵な作品ですね!私はクラシックはあまり詳しくないのですが、久石譲さんの曲は好きです!とっても素敵ですよね。応援しています! (2019年9月24日 23時) (レス) id: 7d8442c23e (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 林 香織?さん» ありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです♪。私の大好きな曲ばかりなので聞いていただけて幸いです。ぜひクラシックに興味を持っていただけたらなと笑!更新頑張って参ります…これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年9月17日 14時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
林 香織?(プロフ) - ぽへみあんさん» 初めまして!団長の不器用さと主ちゃんの優しさに虜になりました!出てくるURLを聴きながら小説を読みこんな曲か…と読んでおりました(笑)作者さんのペースで更新頑張ってください! (2019年9月11日 23時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
ぽへみあん(プロフ) - 死体さん» ありがとうございます!そんなそんな…(--;) 私なんてまだまだですが、そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします(_ _) (2019年8月20日 10時) (レス) id: 6ca0d30634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽへみあん | 作成日時:2019年7月21日 0時