私を頂上へ連れてって【日プ無印】 (ページ41)

今日:9 hit、昨日:226 hit、合計:86,083 hit

. ページ41

「豆ちゃん、」
豆原「…ごめん、Aちゃんもつらいはずなのに」
「…そうだけど…、でも、今の豆ちゃんを見てる方がつらい」

ヒチョンくんに続いて、ユンドンくんとヨンフンくんがこのオーディションを辞退した。特に豆ちゃんは仲が良かったから心配だ。

ヒチョンくんからもらった腕時計を握りしめる。

もう一緒にいられないなんて、そんなことは信じられなくて、信じたくもなくて。ただ戻ってきてほしいと願うだけだった。

そんなことをしているうちにも時間は過ぎていく。練習はしないといけない。そんなこと分かっていた。

.

景瑚「…A？大丈夫？」
「…っ！ごめんなさい！」

景瑚くんに声をかけられていたのにも気づかずに、またボーッとしてしまっていた。

景瑚「体調悪い？」
「大丈夫です、…集中しないとですよね」

泣きたくないのに、涙が出てきてしまう。もう泣かないって決めたのに。どうしてもその雫を零したくなくて、必死に拭う。

景瑚「A、ちょっとだけ抜け出そ！」
「えっ？」

手を引かれて練習室の外に。

景瑚「好きなだけ吐き出しな？」
「…私だけじゃないのは、分かってるんです。でもやっぱりつらくて、どうしても思い出しちゃうんです。…信じられないし、信じたくない」
景瑚「…うん」
「最近ボーッとすることも多いし、集中しないといけないのは分かりきってるんですけど、どうしても切り替えが出来なくて」

全てを話すと、頑張ったね、って。そう言ってくれた。

景瑚「Aだけじゃないかもしれないのはそうだけど、でもAもつらいんだよ。無理しないで。俺、Aが体調崩したりでもしたら倒れちゃう」
「…景瑚くん…、ありがとうございます」
景瑚「今だけ泣いちゃえ」
「…っ、…ううん、泣かない。デビューするまで泣かないって決めたんです」

そう言うと、景瑚くんはフッと頬をゆるめた。まるで偉いねとでも言うように頭を撫でられる。

景瑚「明日レコーディングだもんな。頑張るか」
「はい！景瑚くんラップ出来ましたっけ、教えてください」
景瑚「えー、俺が？」
「んー、やっぱ潤くんに教えてもらお」
景瑚「なんやねん」

景瑚くんが話を聞いてくれたおかげで、だいぶスッキリした。レコーディングに向けて、練習に集中出来そうな気がする。

いつも、人に助けられてばかりだと実感した。