私を頂上へ連れてって【日プ無印】 (ページ38)

今日:62 hit、昨日:226 hit、合計:86,136 hit

. ページ38

矢部「さあ、初めてのデビュー圏内です。一言どうぞ」

「…はい。…まずは、私に投票してくださった国民プロデューサーの皆さん、ありがとうございます。今回初めてデビュー圏内に入ることが出来て、すごく驚いていますし、すごく嬉しいです。ファイナルでも私らしく努力して、感動するステージをお届けするので、最後まで私に力を貸してください。お願いします。改めて、ありがとうございました！」

後ろを見れば、もう呼ばれた人達がこっちまで来てくれた。

床波「おめでとう！」
本田「おめでとう」
佐藤「よかったぁ、おめでとう」

「ありがとうございます！」

泣きそうになるけど、グッと堪えた。もう、これからは泣かない。次に自分のことで泣くのは、デビューが決まった時だけ。そう決めたから。

ふわふわの椅子に座れば、一気に緊張が解けた。

そして、また練習生の名前が呼ばれていく。どんどん名前が呼ばれて、1位の発表も終わった。

次はいよいよ21位の発表。35位からの発表で、35位には秀太くんが呼ばれた。歌を教えてくれて、いつも寄り添ってくれた秀太くん。コンセプトバトルのとき、彼に救われていた部分も大きかった分、ショックも大きかった。

そしてどんどん人の名前が呼ばれていき、最後は來良くん、優心くん、ヒコちゃんだけになった。全員と仲がいいからこそ、全員21位で呼ばれてほしかった。

優心くんが呼ばれ、あとは來良くんかヒコちゃんのどちらかが残るか落ちるか。こんなの、残酷すぎる。

21位はヒコちゃんで、來良くんは22位だった。もう來良くんと一緒にパフォーマンス出来ないんだと思うと涙が出てきそうになった。

順位発表式が終わり、私は來良くんの元へ。

「…來良くんっ……」
來良「ごめん、ごめんね」
「…っ、一緒に残るんじゃ…なかったの…？」
來良「っ、ごめんっ、」

違う、違うのに。謝罪の言葉が聞きたいわけじゃないのに。

「來良くん。…っ、絶対また、帰ってきてね」
來良「……うん」

.

そして、もう1人。どうしても話したかった人が。

「文哉くん、」
佐野「…まだステージ立ちたかった」
「まだ文哉くんと一緒にやりたかった」
佐野「俺も。Aの考える振りも構成も、俺大好きだよ」
「…っ、…絶対また、会おうね」
佐野「…約束だね」

小指を絡めて文哉くんの元を離れたあと、誰もいない場所で静かに泣いた。一気に襲いかかってきた仲間との別れが、あまりにもしんどくて、1人で抱えきれそうになかった。