私を頂上へ連れてって【日プ無印】 (ページ34)

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「〜♪……違う……」

もう本番まで時間はないのに、楽しく歌うことが分からなくなっていた。

「……〜〜〜♪」

何を歌っても、どんな風に歌っても、まるで違う。今まではどうすれば感情を乗せて歌えていた？どうすればもっと楽しく歌えていた？

考えても考えても分からない。どうすればいいのかな。

廊下に出て、ひとりで歌うけど響かないし誰にも届かない。こんな歌、誰が聞いていて感動してくれるんだろう。

？「……A？」

名前を呼ばれて振り返ると、そこには景瑚くんの姿が。

「景瑚くん……」
景瑚「……何かあった？」

眉を下げて心配そうに聞いてくれる景瑚くん。

「……っ…、歌えないっ…」

ダメだ。どんなに頑張って止めようとしても涙が溢れ出してくる。

「…歌えないんです…」

どうにか絞り出した声は、自分でも驚く程に震えていてか細い声だった。

景瑚「……つらいね」
「明日リハなのに…どうすれば楽しく歌えるか、分からなくなっちゃったんです。この曲もメンバーも大好きなはずなのに、何も分からない…」

そんな私を見つめる景瑚くんは、優しく抱きしめてくれた。

景瑚「Aは本当に真面目だよね。…まっ、そこがAのいい所なんだけどー」
「……っ、…こんなに泣いてても、仕方ないですね」
景瑚「いっぱい泣きな？…大丈夫だから」

景瑚くんはいつだって、私を安心させてくれる。悩みを聞いてくれて、変にアドバイスする訳でもなくただただそばにいてくれる。

景瑚「落ち着いたら、Aが今までで一番楽しかったこと教えてよ！」

そんなに楽しそうに言われたら断れないし、なんなら断る気もないので頷いた。

「……景瑚くん。いつもありがとうございます」

そう言っても、ん？って顔しかしない景瑚くん。彼はいつも、私のことを救ってくれる。

「私が今までで一番楽しかったのは、前のグループにいた時の卒業コンサートです」
景瑚「そっかぁ。どんな気持ちでパフォーマンスしたの？」
「今までありがとうっていう思いと、これからもまだまだ成長するから見ててねっていう思い……でした」
景瑚「ハピメリのステージでも、私はこれからだから！って思いながらパフォーマンスしてみたら？」

その景瑚くんの言葉に、はっとした。