私を頂上へ連れてって【日プ無印】 (ページ12)

今日:97 hit、昨日:226 hit、合計:86,171 hit

. ページ12

「…ここの振りって、こっちの方が…」
川尻「確かに。ありがとう」
「ふふ、どういたしまして」

それから、私も振り付けに参加するようになったし、空くんの一言でグループの雰囲気が変わった。

「…祥生くん、ありがとうございました」
大平「え？何が？」
「アドバイス。祥生くんが声掛けてくれたから、頑張ろうって思えたんです」
大平「…それなら良かった」

ニコリと微笑んでそう言ってくれた祥生くんの様子がおかしいことに気づいたのは、どうやら私だけみたいだった。

「……祥生くん、大丈夫？」
大平「うん、大丈夫やで」
「…でも、」
大平「…大丈夫。心配してくれるんありがたいけど、ほんまに大丈夫やから」

練習の休憩中にも、沈んだ顔をしていることが多くなった祥生くん。

「……祥生くん、今日ご飯一緒に食べましょう」
大平「Aから誘ってくれるん珍しいなぁ、ええよ。食べよ」

一緒にいないと、ダメになってしまう気がしたから。だから、一分でも一秒でも長く祥生くんといようと思った。

練習が再開し、また踊り出す。自分の感情に嘘をつかないで踊ってみようとするけど、本当の私の気持ちって何だろう。

デビューしたいっていうのは大前提として、このパフォーマンスを通して何をお客さんに伝えたいの？私の姿が、どんな風に国民プロデューサーさんの目に映ればいいの？どうなれば、私は満足するの？

「私を見つけて欲しい」？「私に投票して欲しい」？なんか、全部違う気がする。

また休憩に入った途端、涙が止まらなくなってしまった。この合宿中、初めて涙を零した瞬間だった。

「っ…」
木全「…大丈夫？休もっか」
川尻「頑張りすぎちゃったかもね」

こんなことで悩んで、ボロボロになって、結局チームに迷惑かけてる。

大平「……迷惑なんかじゃないで。俺、Aが俺たちの前で泣いてくれて嬉しいで」

突然、祥生くんからそんなことを言われる。

大平「ずっと涙は見せてくれんかったけど、今やっと泣いてくれて心開いてくれてるんやって思ってる」
「…っ、皆が大好きだからっ、…迷惑かけたくない…」

大平「迷惑じゃないって。デビューしたいとか、投票してほしいとか、表面だけやなくて、今みたいな弱いAも見せてええと思うけどな」

目を合わせてそう伝えてくれる祥生くん。その言葉に納得したし、安心した。本当の私は、ずっと強い私じゃなくて、今みたいに泣いたり悩んだりする弱い私だ。