鈍色の空が晴れたなら (ページ10)

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第九話ページ10

「わ、私の毛並みが……」
「あとで、洗ってあげるから」

埃まみれになったこんのすけが悲壮な声を上げる。
いやあ、すきまとかずいぶんきれいになったなあ。

「ブラッシングもしてくださいよ！」
「道具ないし」
「ううう……」

経費を、××××円ぐらい頑張って節約すればいけるかな……
と、端末を見ながら簡単に計算をしていく。
正直いけなくはない。食費と簡単な身の回りのもの以外いらないのだから。

「(まあ、さすがにかわいそうだし買っとくか)」

歯ブラシや、歯磨き粉などの身の回りの品と一緒になぜかあったブラッシング用の道具を買っておく。狐って猫と一緒のブラシでいいのかな……

「よし、こんのすけシャワータイムだよ」
「埃まみれであと半日過ごさなければならないかと思ってました」

私もさすがにそこまで鬼畜ではない。

「そんな私をあがめたたえてもいいんだよ？」
「審神者様ばんざーい」
「良い管狐のこんのすけくんには油揚げを一枚あげよう」
「審神者様大好きー」
「ちょろいな」

最後におもわずぽろりと本音が漏れた。
というか、私審神者じゃないんだけど……まあ、いいか。

□

「ふれっふれっ審神者様ー、いいですよーーー」

こんのすけの声援を受けながら、私は畑の土を耕していた。
明日は、きっと腰が痛くなるんだろうなと思いながら鍬を振りおろす。

「審神者様、そこっ腰入れてっっ」
「……」

無言で鍬で土を耕していく。
腰が現時点でもう痛くて、なんとなく楽な体制をとってしまう。

「へっぴり腰ですよ！！畑しごとは甘くないんですよ！」

……なんか声援がだんだん違うものに変わっていってるような。

「だめだめですよ、腰入れて！！」
「こんのすけは、私の応援してるの？それとも私を貶してるの！！？」
「もちろん応援してオリマスヨ？？？」
「この管狐、なめてるのかな」

最後のほうに明らかに感情が抜け落ちていたことに私は気づいた。
暴力に訴えるのはいけないので、きれいにしたばかりの体を今度は土まみれにしてみた。
狐の断末魔など聞こえない聞こえない、さて種をまこうかな。