鈍色の空が晴れたなら (ページ6)

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第五話ページ6

まだ重たい瞼を開けると、長義さんの姿はなかった。
しかし、代わりと言わんばかりに外套がかけてあって、ちょっと笑いそうになる。
意外と、面倒見のいいひとなのかもしれない。

「あ、裏地は藍色なんだ」

ただの布はそこはかとなく高級感を訴える。
肌触りはよく、裏地は色が違う。
また、布地の表には、裏地と同じ色の房がついている。

「(……まあ、おしゃれそうな人だったしな)」

あれはおしゃれにこだわりを持つ人間と見た。
なんていうか、伊達者？って感じがする。
それに、このマント、いいにおいがする。
決して、私はにおいフェチでないのでそれだけは弁解させてほしい。

「(花、みたいな……)」

きついにおいでもない。
ほんのりと香るそれはなんだか、安心感を覚えさせた。
いやでも言わせてね、大事からね。私は決してにおいフェチじゃない。

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「……はっ、……二度寝決めてる場合じゃなかった！！」

時間がどれほど、経ったのかはわからないが気が付けば
意識が飛んでいたので、ばっちり二度寝をしたことだけは間違いがない。
長義さんの外套は借りたままだし、返しに行かねば。

「それにしても、この屋敷はなんだろう」

他より汚れがましといわれたこの部屋は、
人が使っていないせいか、少し埃っぽい。
それに、少し赤黒い汚れがついている、血じゃないよね？
そんな考えに至ると、少し背中がぞわぞわとしてきた。こわい。

「でも、ここを出たら、何があるんだろう」

ふと、そう考えて、また怖くなる。
が、いや女は度胸だと言い聞かせ、障子戸を開け、廊下に出る。
そして、その惨状に思わず、口を開ける。

「(え……やばくない？)」

ほこりと泥のような何かにまみれていて、
建物自体には、切り傷があちらこちらについている。
何があったらこんなに傷だらけになるんだ。

「なにこれ……」
「ここは、本丸だった場所だからだよ」

長義さんが、後ろに立っていた。
正直、後ろから突然声をかけるのはやめてほしい。
今回は、本当に驚いたし、心臓がきゅっと締め付けられるほど怖かった。

「びっくりした……」
「すまないね、いきなり声をかけて」

まあ、国宝級の顔面がちょっと曇った表情したら、許すよね。