鈍色の空が晴れたなら (ページ11)

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第十話ページ11

「腰いてえ……だるいよ……」

女の子特有のあれがひどいときと同じような鈍い痛みと重さが私を襲っていた。
無事に畑仕事を終えた私は、縁側で団扇を仰ぎながら休んでいた。
体を動かしているときは汗をかかないのに、休むとどばっと汗が出るのが嫌だ。

「なんで、土って耕すんだろう……教えてこんのすけ」
「ええ……えっとですね、審神者様が土に埋まるとするじゃないですか」
「！！？」

驚きすぎて、とんでもない顔でこんのすけのほうを見た。
前提がとてつもなくおかしい気がするが、とりあえず頷いておく。

「かたいのとふわふわなのどちらがいいですか」
「……ふわふわ？？」
「そういうことです」
「えっ、あっ……うん、そ、そういう、ことなん、だ……」

ちょっとよくわからない、という困惑を隠せない返事をする。
とりあえず、植物も居心地がいいところにいたいということ、だろうか。

「(こんのすけってみんなこんな風なのかな)」

とんだ誤解である、とツッコむ人物はいなかった。

□

「君、こんなところで寝ていたら風邪を引くよ」
「あ、あと五時間……」
「不可だよ、ほら体もこんなに冷えてるだろう」
「長義さん、カイロか何かだったり……？」

君が冷たすぎるだけだよ、と少しあきれたように言われながらブランケットをかけられる。
黒色のそれは、肌触りが良くて暖かかった。長義さんの私物だろうか。
……ふわりと香る匂いは、とても心地が良かった。
のそりと立ち上がるが、まだ残る眠気からなのか体がひどく重い。
ずるずると身を引きずるようにして歩く私を見かねたのか、長義さんが振り返って手を差し出した。

「……？？」
「手につかまれということだよ」

頭がうまく回らず、差しだされた手に首をひねると彼が少し早口でそういった。
少ししてようやく意味を咀嚼した私は、お礼を言いながらその手に触れる。

「(……あったかい)」

私のペースに合わせてくれているのか、ゆっくりめの歩調で進む彼の背中を見て、私は少しうれしく思った。……どうしてなのか、わからないけれど。