第四十六陣 約束 ページ6
「なあ、いち。お願いがあるんだ」
「……はい」
「もし、もし俺が俺でなくなってしまったらその時は、君が斬ってくれ」
「え……」
「約束してくれるか？」
「……わ、かりました。この一期一振の名に誓って、その約束、果たしましょう」
きっと、そんな日が来ることはないと思っていた。
けれど、その考えは甘かったのだと私は、あの日、知ったのです。
あの人の言葉がどれほどの葛藤と苦しみからひねり出された言葉だったのか、
ようやく、あの時に気付いたのです。
□
「その言葉に、うなずいた時の私は、それが本当になるだなんて思いませんでした」
「……でも、現実になった」
「ええ、彼が、審神者を斬るといったそのあとに、言われました」
□
「なあ、いち。あの約束を、覚えているかい？」
「あなたを斬る、というあれですか」
違う、と言ってほしかった。
それじゃなくて、本当に私の忘れた違う約束だったといってほしかった。
けれど、彼の口が紡いだ言葉は肯定だった。
「ああ、そうだ」
「……約束を、果たす時が来たのですか」
「おそらく、俺はもうもたない。俺があいつを斬ろうとも斬らずとも、
それはただ先延ばしにしているだけだ。どちらにしろ、俺は、いつか堕ちる」
「……」
「だから、いち。君たちの恨みはここで晴らそう。
……そして、堕ちた俺を、君が、斬ってくれ」
静かな声だった。
死を選ぼうとしているのに、その声に恐怖は微塵も感じられなかった。
きっと、彼は譲る気がないのだと、その決心は硬いのだとわからざるをえなかった。
「…………はい」
□
「このほんまるはほんとうにむだにへやかずがおおいですね！！」
「落ち着け、今剣」
「おちついていられますか！！？」
早口でまくし立てる今剣。
岩融は、なんと声を掛けたらよいものか、と悩んでいた。
何を言っても今は無駄な気がしたのだ。
「相変わらず元気だな」
その時、岩融でも、今剣でも、薬研でもない、第三者の声がした。
しかし、それはけして聞き覚えのないものではない。
「……みかづき」
「はは、親の仇を見るような顔をするでない。
……俺たちは、兄弟であろう？」
「なにをしにきたのですか？」
「何、爺のお節介というやつだ」
今剣がいぶかしげな顔をした。
……兄弟とはいえ、今まで交流を持とうとしなかったものが何を？
岩融も、今剣も、その真意が読み取れなった。
「……それに、俺も、あれを止めたいと思っているからだ」
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ANZU* - とても面白かったです。薬研との今後や加州達が来てからの話なども見てみたいです。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page26 id: ff73ec05c8 (このIDを非表示/違反報告)
ぺろ@IN率低下(プロフ) - 霊華さん» コメントありがとうございます……！私情であまり更新できないのですが、完結できるよう頑張らせていただきます……！！ (2018年9月6日 19時) (レス) id: df7989d6de (このIDを非表示/違反報告)
霊華 - とても面白いです！これからも更新頑張ってください！応援してます！ (2018年8月23日 22時) (レス) id: 0beaa7df7a (このIDを非表示/違反報告)
ぺろ@IN率低下(プロフ) - Sazanami_syoutanさん» コメントありがとうございます……励みになります……！更新のほうも遅いですが、頑張ります……！！ (2018年2月15日 20時) (レス) id: df7989d6de (このIDを非表示/違反報告)
Sazanami_syoutan(プロフ) - 面白いです!更新楽しみに待ってますね!! (2018年2月15日 1時) (レス) id: 39d69f205d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺろ@IN率低下 | 作成日時：2017年11月20日 22時
