第四十五陣 追憶 ページ5
＿＿あの人は、良く笑う人だった。
こんな生き地獄のような場所でも、
貴方はやはり変わらないのだなと、少し安心感を覚えていた。
「あいつはさ、本当は気弱で、寂しがりなんだ」
ただ、貴方のその言葉には納得できなかった。
あんな、鬼の権化のようなものが、寂しさなど、感じるはずもない。
……いつもいつも、貴方のその言葉を聞くたびに思っていた。
「なあ、いち。きっと、君だけはそのままでいてくれ」
何度目かのそれ。あなたは、この言葉を私に投げかけるときだけ、
ふと、陰りのある笑みになることに、気づいているのですか？
「俺との、約束だ」
「……ええ、わかっておりますよ、鶴丸殿」
・
・
・
そんな貴方に私は、なんという業を背負わせてしまったのでしょうか。
その気高い身を、穢してしまった。ほかでもない、私のために。
いつだって、いつだって。思い出せる。
「なあ、いち。君は＿＿」
でも、貴方の最期のその言葉だけが、どうにも＿＿＿＿＿
□
「ふふ、馬鹿なお人でしょう。あの人は、いつだって、信じてたんです。
最期の瞬間まで、あの、鬼のような……人の子を」
私のほうを見ているけれど、見ていない。
きっと、彼が見てるのは、私ではなく、いつかの彼なのだろう。
彼の向こうで、掲示板が、残り時間を告げる。
残り＿＿29分07秒。
□
それは、月のない夜だった。
ふと、部屋の外に誰かの気配を感じた。
「……鶴丸殿、ですか」
自分の部屋にこんな夜分に来るほど気の知れたものは彼ぐらいしかいない。
弟たちに、今動けるような状態の子はいない。
「ああ、俺だ」
「そうですか……」
彼は、返事をしながら障子を開けるとすぐに身を滑り込ませ、素早く閉めた。
月の光もなく、また、光源のない暗い部屋の中、彼は私に問いかけた。
「なあ、一期、君は主を殺したいか？」
そんなわかりきったことを聞いてどうするのだろうと不思議に思う気持ちがないわけでもなかった。
が、一応問われたわけだ。答えぬわけにもいくまいと口を開く。
「当たり前でしょう、なんと憎たらしい……」
その時の彼は、いったいどんな表情をしていたのだろうか。
……予想もつかない。悲しそうな顔をしていたかもしれないし、
いつもと同じく笑っていたのかもしれない。想像もつかない。
「そうか、なら……俺が、あいつを斬ろう」
「……鶴丸、殿……？」
その声音は、審神者を信じる、そう言っていたのと同じだった。
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ANZU* - とても面白かったです。薬研との今後や加州達が来てからの話なども見てみたいです。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page26 id: ff73ec05c8 (このIDを非表示/違反報告)
ぺろ@IN率低下(プロフ) - 霊華さん» コメントありがとうございます……！私情であまり更新できないのですが、完結できるよう頑張らせていただきます……！！ (2018年9月6日 19時) (レス) id: df7989d6de (このIDを非表示/違反報告)
霊華 - とても面白いです！これからも更新頑張ってください！応援してます！ (2018年8月23日 22時) (レス) id: 0beaa7df7a (このIDを非表示/違反報告)
ぺろ@IN率低下(プロフ) - Sazanami_syoutanさん» コメントありがとうございます……励みになります……！更新のほうも遅いですが、頑張ります……！！ (2018年2月15日 20時) (レス) id: df7989d6de (このIDを非表示/違反報告)
Sazanami_syoutan(プロフ) - 面白いです!更新楽しみに待ってますね!! (2018年2月15日 1時) (レス) id: 39d69f205d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺろ@IN率低下 | 作成日時：2017年11月20日 22時
