第六十二陣 好き ページ22
「ひどい話だよ、だって、……私の心の中に最初に薬研が住み着いたんだもん」
この時代では今、まさに戦っている。元の場所より、ずっと大切な人を失う可能性が高い。
だから、大切のカテゴリーに入れたくなかったのに、勝手に入ってきたのだ。
「薬研を失うって思ったとき、すごく怖かった。
すごく、恐ろしくて何もできなかったけれど、怖がってるだけじゃだめだって思ったの。
怖い中でだって、気丈にふるまう人がいるって、気づいたから」
何度も、弟を失ってきた彼は、私以上に怖い思いをしていただろう。
でも、そんな思いを口に出さずに、薬研を救うべく動いた。
そして、今、薬研は無事でここにいる。
「失うのが怖いなら、守ればいいだけなんだって。
……前の私じゃできなかったけれど、今の私なら、私の立場ならできる。
だから、本当に正直に言うね。私、薬研がすごい大切なの。
今剣たちが大切じゃないっていうことじゃないよ。あなたたちを家族とするなら、薬研はもっと別の違うもの。多分、私は薬研のことを、……好き」
好き、といったときこの感情にようやく明確に色が付いた気がした。
……ああ、私薬研のこと好きだったんだ、って腑に落ちた。
「えっと、これでいいかな」
「……はい。ずいぶんねつれつなのろけでぼくもびっくりしました」
「惚気……」
「そういわずになんというんですか？」
なるほど、これは確かに惚気だ。と、自分の言葉を思い出してだんだん恥ずかしくなる。
顔がほてってきて、思わず両の手のひらで頬を包む。
「は、恥ずかしい……」
「えっ、じかくなかったんですか」
心なしか、今剣が私に対して遠慮なくなっているのは気のせいだろうか。
だんだん湧いてくる羞恥心に勝てなくて、頬包んでいた手が顔を覆う。
「ううう……何言ってるんだろう、私……」
「いわせたのはぼくですけど……くちのなかがだんだんあまくなってきてこまってました」
「ごめんなさい！！！」
短刀の子たちが年長者であることは知っているが、これはひどい。
「主、少しいいか？」
「うぐいすまるですか？はいってきてかまいませんよ。でも、あるじさまがふっかつするまでまっててください」
「……？どういうことだ？」
障子戸の開く音がした。それでも、私は顔を上げられない。
「今剣、これは？」
「むいしきで、すごいのろけをしてじぶんにだめーじがいってるところです」
「なるほど」
「ひぇ、今剣が冷たい」
その後、顔の熱が冷めるまでにしばらくかかった。
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ANZU* - とても面白かったです。薬研との今後や加州達が来てからの話なども見てみたいです。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page26 id: ff73ec05c8 (このIDを非表示/違反報告)
ぺろ@IN率低下(プロフ) - 霊華さん» コメントありがとうございます……！私情であまり更新できないのですが、完結できるよう頑張らせていただきます……！！ (2018年9月6日 19時) (レス) id: df7989d6de (このIDを非表示/違反報告)
霊華 - とても面白いです！これからも更新頑張ってください！応援してます！ (2018年8月23日 22時) (レス) id: 0beaa7df7a (このIDを非表示/違反報告)
ぺろ@IN率低下(プロフ) - Sazanami_syoutanさん» コメントありがとうございます……励みになります……！更新のほうも遅いですが、頑張ります……！！ (2018年2月15日 20時) (レス) id: df7989d6de (このIDを非表示/違反報告)
Sazanami_syoutan(プロフ) - 面白いです!更新楽しみに待ってますね!! (2018年2月15日 1時) (レス) id: 39d69f205d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺろ@IN率低下 | 作成日時：2017年11月20日 22時
