第五十四陣 捨てたもの ページ14
戦場でドロップしたり、日課の鍛刀などで比較的本丸にも刀剣男士が増えてきた。
特に粟田口が多く、長兄である一期一振は嬉しそうに弟たちと笑いあっている。
目の色もほとんど本来の金色に戻っている。
「一期さん最近楽しそうですね」
「ああ、信じられる審神者の下で兄弟たちと過ごせるのがうれしいんだろう」
隣にいた薬研もまた、嬉しそうに顔をほころばせながら言った。
……すこしだけ、いいなぁ、と思ってしまった。
胸の中に少しもやっとしたものを感じながら私は、
「薬研も、よかったね」
と、何でもないように言った。
「ああ」
いちにい、と短刀たちが一期一振に駆け寄って、笑いあっている。
私の望んだ光景、心温まる光景なのにどうして、こんなにも
「(胸が苦しいんだろう)」
□
こんのすけは、気づいていた。
手のひらを見つめる彼女の表情が暗く曇っているということを。
何を思って、何を憂うのか、式神であるこんのすけには根本的には理解できない。
感情豊かに見えて、じつは誰よりもそれが希薄であるがゆえ。
しかし、審神者のサポート全般はこんのすけに委託されている。
「審神者様」
だから、声をかけた。
だが、具体的に何を言おうかなど考えていない。
「何？」
いつもと同じ表情で首をかしげる彼女に、歯切れ悪く。
なんでもありません、と返した。
□
そこはあの美術室だった。
部員たちが、活動している。
……ふと見た席割には私の名前が書いてあった。
その席は、空席のままみんな作業している。
「……そういえばさ」
部長をしている同級生がポツリと呟いた。
「(人2)、どうしてるんだろう」
「行方不明だって聞いたよ」
「……心配だよね」
そのつぶやきに答えたのは、別の同級生たちだった。
……ああ、と声が漏れた。
「ごめんなさい」
胸が、痛くて痛くて服の上から強く押さえつける。
私の捨ててしまったものが、私の前に立っていた。
「ごめんなさい」
もう戻れない。
ぽっかり空いた空席がいやに目についた。
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ANZU* - とても面白かったです。薬研との今後や加州達が来てからの話なども見てみたいです。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page26 id: ff73ec05c8 (このIDを非表示/違反報告)
ぺろ@IN率低下(プロフ) - 霊華さん» コメントありがとうございます……！私情であまり更新できないのですが、完結できるよう頑張らせていただきます……！！ (2018年9月6日 19時) (レス) id: df7989d6de (このIDを非表示/違反報告)
霊華 - とても面白いです！これからも更新頑張ってください！応援してます！ (2018年8月23日 22時) (レス) id: 0beaa7df7a (このIDを非表示/違反報告)
ぺろ@IN率低下(プロフ) - Sazanami_syoutanさん» コメントありがとうございます……励みになります……！更新のほうも遅いですが、頑張ります……！！ (2018年2月15日 20時) (レス) id: df7989d6de (このIDを非表示/違反報告)
Sazanami_syoutan(プロフ) - 面白いです!更新楽しみに待ってますね!! (2018年2月15日 1時) (レス) id: 39d69f205d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺろ@IN率低下 | 作成日時：2017年11月20日 22時
