第五十二陣 名乗り ページ12
急遽茶会から、審神者褒め大会に変更された結果、
私はこれまでにないほどのむずがゆさをあじわった。
うまく言えないけれど、心がむずがゆかった、と、いうか……
でも、それはけして嫌なものじゃなかった。
んだけど、少しある変化に戸惑っている。
「(ちかい)」
薬研が、前よりも近いのだ、物理的に。
一体、何が原因なのだろうか……？
□
薬研との距離は近くなったものの、さすがに夜までということはなった。
ので、ほっと胸をなでおろした。
夜の帳が下りた本丸は、とても静かだった。
けれど、その沈黙はけして重たくはなかった。
不思議と目のさえていた私は、縁側に腰かけて夜空を見ていた。
その景色は、いつか見たプラネタリウムを思い出すほど、星がくっきり見える。
不意に、私の耳に、きし、という床のきしむ音が聞こえた。
「……一期さん、ですか」
そこにいたのは、一期一振だった。
寝間着には不向きであろう、というか寝間着ではないだろう、
普段のあの軍服をきっちり着こんでいた。
「審神者殿」
声も、少し硬い、ような気がした。
「……どうしたんですか？」
「昼間、私の願ったことなのですが……」
刀解の下りか、と私は一人で納得した。
なるほど、たしかにうやむやになったといえば、そうかもしれない。
「まだ、それを望みますか？」
「……いえ、非常に身勝手なことを言っていると思うのですが、
あの願いは、聞かなかったことにしていただきたいのです」
そんなことで、あらたまらなくてもいいのではないか、と思いながら頷いた。
それにいわれなくても、私に彼を刀解する気なんて微塵もなかった。
「もとから、私はあなたを刀解するつもりありませんでしたよ」
「……お心遣い、感謝いたします」
顔がいいだけに、険のない微笑はもはや凶器である。
私の心の、ど真ん中を容赦なくついてくる感じ……くそ、大好きだ。
「審神者様」
「はい？」
相変わらず微笑を浮かべた一期さんに呼ばれてなんだ、と思いながらそちらを見た。
「私は、一期一振。粟田口吉光の手による唯一の太刀。藤四郎は私の弟達ですな」
彼と私の間で、見えない何かがつながったのを感じた。
いや、ちょっと待て。今、彼は私に……名乗らなかったか？
え、気のせい、じゃ、ないよね……？
「これで、私は本当の意味であなたの刀剣になりましたな」
「……本当に、いいんですか？私が主で」
「もちろん。……あなただからこそ、私は名乗ったのです」
待って、今の言葉は反則。
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ANZU* - とても面白かったです。薬研との今後や加州達が来てからの話なども見てみたいです。 (2023年2月13日 21時) (
レス) @page26 id: ff73ec05c8 (このIDを非表示/違反報告)
ぺろ@IN率低下(プロフ) - 霊華さん» コメントありがとうございます……！私情であまり更新できないのですが、完結できるよう頑張らせていただきます……！！ (2018年9月6日 19時) (レス) id: df7989d6de (このIDを非表示/違反報告)
霊華 - とても面白いです！これからも更新頑張ってください！応援してます！ (2018年8月23日 22時) (レス) id: 0beaa7df7a (このIDを非表示/違反報告)
ぺろ@IN率低下(プロフ) - Sazanami_syoutanさん» コメントありがとうございます……励みになります……！更新のほうも遅いですが、頑張ります……！！ (2018年2月15日 20時) (レス) id: df7989d6de (このIDを非表示/違反報告)
Sazanami_syoutan(プロフ) - 面白いです!更新楽しみに待ってますね!! (2018年2月15日 1時) (レス) id: 39d69f205d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺろ@IN率低下 | 作成日時：2017年11月20日 22時
