きみを好きになって～S・O～４ (ページ20)

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あの時、最初で最後の嘘をつくために仮面を被った。

お芝居なんかしたことないのに自分の感情を押し殺して、精いっぱいの演技をしたつもり。

そのおかげで智くんの家を出るまで、泣かずに済んだ。

でも・・・。

家にたどり着いたとたん、こらえていた涙が堰を切ったように溢れて、床に崩れ落ちた。

何であんなこと言っちゃったんだろう・・・。
好きなのに何で？

自分で言ったことなのに、もう後悔してるなんて。

悲しくて、苦しくて、息が出来ない・・・。

でもあの時の智くんの辛そうな顔見てたら、言ってしまってた。

智くんにあんな顔させちゃ駄目だって思った。

大丈夫だよ、智くん。
私のことなんてすぐ忘れる。
また、すぐ次の恋が出来るよ。

一晩泣いたのに、翌日にはちゃんと仕事に行った。

３０過ぎにもなって、別れたぐらいで休むなんてことはしたくなかった。

だから会社でも仮面を被って、別れた翌日にもちゃんと仕事をするって演技をし続けるはめになって・・・。

結婚が決まって幸せ全開の典子にも、ばれることなく完璧にお芝居をした。

私ってこんなに芝居がうまいんだって、自分でびっくりしたりして・・・ね。

そして家では智くんを想って泣きそうになるのを必死にこらえてた。

それなのに突然智くんからメールが送られてきて、ドキッとしている自分がいる。

どんな内容のメールなのか、読むのが怖かった。

その反面、まだメールをくれるってことが嬉しく感じてる自分もいて、バカだなぁって思う。

『いつか、おれの本気を見せるから』

これは・・・どういうことだろう？