きみを好きになって～S・O～３ (ページ29)

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「・・・迷いそうになっちゃった。」

おいらのそばまで来ると、Aは首をすくめた。

なんか無理して作った笑顔みたい。

「遅いから見に来てよかったかな。
・・・今、喋ってたの、誰？」

「え・・・あ、父親の知り合いなの。
お正月に・・・田舎の家にお年始の挨拶に来てて。
こんなとこでばったり会ったからお互いびっくりしたの。」

「・・・ふぅん。
おいらもトイレ行ってくる。
部屋は奥から２番目。
先戻ってて。」

Aをひとりで戻らせて、トイレに向かう。

さっきAが知り合いと話してた場所まで行ってみたけど、そのあたりにはもう誰もいなかった。

当たり前か・・・。

部屋に戻ると、ドアが少し開いていた。

２人が話してる声が何となく聞こえて、音をたてないように部屋に入った。

おいらと２人の間には、ドアを開けても中が見えないように置かれたついたてがあるから、翔くんもAもおいらが戻ったことに気がついてないみたい。

「見合い相手？！」

翔くんが大きな声を出した。

見合い？

「しっ！
声が大きいです・・・。」

「見合いしたの？」

「・・・したつもりは・・・ないです。
そのあと・・・」

Aの声が小さくなって、何を言ってんのかわかんなくなったけど、ついたての影にいるおいらは、２人の前に出て行くことが出来ないまま。

何で、おいらじゃなくて翔くんにそんな大事なこと言っちゃってんの？

「あなたは？
どうしたいんですか？」

「・・・。」

翔くんの質問にAは答えてない。

それ以上聞きたくなくて、モヤモヤした気持ちのまま今戻ったようなふりでドアを開けて閉めた。

「翔くん、もう帰るんでしょ？」

「ん・・・邪魔者は消えます。」

おいらが２人の前に出ると、翔くんが立ち上がる。

「じゃぁね、ごちそうさま。」

爽やかな笑顔で帰って行った。