94 Sside ページ44
「初対面なのに入り込んじゃってすみません。
立ち話で出来る内容ではないと思うし、見られたくはないので・・・。」
「わかってます・・・。
あの・・・何故櫻井くんがここに？」
「智くんに頼まれて来ました。
ここの場所を知ってるのおれだけなんで。」
「智くんは、何故来ないんですか？
連絡とれないのは彼の意志ですか？」
Aさんの声は緊張の為か擦れている。
智くんはこのひとのどこに惹かれたんだろう。
「順番に話しますね。
智くん、先週末に釣りに行ったようで、その時、夜の海に落ちたそうです。」
「えっ・・・。」
「ポケットに携帯が入ってて、見事水没したそうです。
だから今、データを取り戻そうとしてるけど、携帯は買い直しだって言ってました。
あなたのアドレスも電話番号も、覚えてないそうです」
「・・・そんな・・・」
誰だって驚くに決まっている。
一歩間違えば生死にかかわることを、さらっと言うんだよあのひと。
「週刊誌に載ったのは知っていますか？」
「ネットでなんとなくです。
そのことについては、彼から聞きたいので結構です。」
急に強い目でおれを見たAさん。
本人からの言葉しか信じないのか。
連絡取れなかった理由がわかって安心した？
「智くんは今、その記事が出たことで外出禁止です。
仕事場以外出られません。」
「・・・。」
しばらく沈黙するAさん。
「わかりました。
あの、智くんは皆に話したんですか？
・・・私のこと。」
「今回は仕方なくだったと思います。
自分は身動きとれないし、携帯も使えない。
マネージャー以外でアトリエの場所を知ってるの、おれしかいなかったから。
でも、ずっと秘密にしていたようだけどおれは気づいてたし、他のメンバーもいつもの智くんじゃないって思ってたんで、バレバレです。」
「そうですか。」
「聞いてもいいですか？
あなたはアイドルの智くんをどう思ってます？」
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作者名：Fg | 作成日時：2014年7月10日 10時
