67 Sside ページ17
しびれを切らしてしまって、携帯をいじっていた智くんに声をかけた。
「何ニヤニヤしてんの？気持ちわりぃよ。」
できるだけ冗談っぽく言ったつもり。
「何でもねぇよ。」
そっけない言い方だけど、それでも顔が緩んでる。
最近特に分かり易い。
「あ、ドラマ始まったね。
見たよ。
すごいね、さすが智くん。」
役に入り込むというか、そのものになってしまう智くん。
彼がやった役はみんなはまり役と言われるようになっていく。
今回の防犯オタクの役も、きっとそう言われるようになるよ。
「ん、あんがと。」
口を尖らせながらも、満更でもなさそう。
「おれだったら、あんな役出来ねぇ。
智くんがいつもストレス解消したいって思うのわかるよ。」
「そんなことねぇよ。
あとどれくらい続くんだろって、毎日考えてる。
・・・おいらもうギリギリだもん。」
「そうは見えないなぁ・・・。」
難しい役を難なくこなして、すっかり自分の物にしているようだよ。
そう言うとあなたは不機嫌になりそうだから、心の中だけに留めておくけど。
難なく、なんかじゃない。
きっと、見えないところで努力をしているんだ。
大野智とはそういうひと。
そして、その原動力になっているのは、たぶん・・・。
どんな子なんだろう？
ここ何年も釣りと絵にしか興味を示さなかった智くんを振り向かせた子。
改行されたメールを唯一もらってる子。
智くんの色のマフラーを持っている子。
そして智くんに四字熟語なんかを教えた子。
これは絶対確信がある。
ああ、知りたい。
おれの方がストレス溜まりそうだ・・。
「翔くん？
なに百面相してんの？
呼ばれたから行くよぉ」
百面相って・・・それあなたでしょ。
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作者名：Fg | 作成日時：2014年7月10日 10時
