90 Oside ページ40
ツアーが始まってと年末まで忙しくなってしまうけど、船長から釣りの誘いがあったから行くことにした。
多分これが今年最後の釣り。
土曜日ってことにちょっとAの顔が浮かんだけど、ちゃんと電話で釣りに行くって話した。
ツアーの始まる前あたりから、リハーサルとかで忙しかったり疲れて寝ちゃったり、先輩から飲みの誘いがあったりでなかなかメールも出来なかったから、久しぶりのAの声にホッとした。
「ツアー始まったのに大丈夫なの？」
「ん、たぶん夜までやるから、連絡出来ねぇと思う。」
この時はさ、ホントに連絡出来なくなるなんて思ってなかったよ。
釣りの最中に、こともあろうか海に落ちるなんて初めてだった。
ポケットの中には携帯も入ってて、見事水没・・・。
それでも釣りを続けたおいらが、事の重大さに気づいたのは船を降りてから。
誰とも連絡が取れなくてあせったけど、とりあえずマネージャーは電話が通じなかったらインターホンを鳴らすだろうから大丈夫。
彼に相談して、携帯のデータを何とかしなきゃって思う。
問題はA、だ。
赤外線で連絡先を交換したから、Aのアドレスと電話番号を覚えてない。
確認もしてねぇな・・・。
今までAの方から電話をかけてきたことはねぇし、メールもあの「絵に熱中しすぎて忘れた事件」があってから、少しずつ送ってくるようになった程度だ。
もうすぐ誕生日だけどメールくれっかな？
それにしても忙しくて、携帯シヨップなんか行けんのか？
約束の時間に迎えに来たマネージャーに携帯のことを言うと
「昨日ずいぶん電話したんですよ。」
とため息まじりに渋い顔。
「なんかあったの？」
「・・・明日発売の週刊誌に記事が載ります。」
「へ・・・？」
変な声が出た。
「ツアーの前に飲みに行ったでしょ？
その時のことです。」
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作者名：Fg | 作成日時：2014年7月10日 10時
