きみを好きになって～S・O～２ (ページ19)

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智くんはその日、午前中からテンションが高かった。

「今日さ、ちょっと画材屋見に行きたいんだよ。
Aも一緒に行こう？」

「え・・・私はいいよ。
智くんひとりでどうぞ。」

ふたりでゆっくり出来るのは、初めてに近かった。

会うのはどちらかの家だけ、智くんと出歩くのは諦めていたから、誘われても戸惑いしかない。

「えぇ？行こうよ。遥と外歩きたい。」

「そんなの無理！」

誰かにばれたら・・・そう思うと断固拒否するしかない。

「ねぇ、店ん中では別々でいいから。
行き帰りのタクシーだけでもさ。」

そんなの一緒に出掛けたことにはならないでしょ？

「智くんが出かけている間、私はスーパーに買い物行ってるから。」

駄々っ子みたいに口を尖らすけど、ダメなものはダメ。

「その画材屋さんてどこにあるの？」

「渋谷。」

「そんなとこにふたりでタクシーで行って、誰かに見られたらどうするの？
私と別れたいの？」

「そんなこと思ってない。
ただ、一緒に行けたらいいなって。
外でデートなんて今は無理だから。」

ドラマ撮影中の慌ただしい告白、会いたくても会えない日々。

ドラマ終わりの休みに釣りに行ってしまって放っておかれた私を気遣ってくれたのかな・・・。

「ありがとう。
でも人混みの多い場所で見つかる心配するくらいなら、家の中だけで会う方が気が楽かな。」

「じゃぁ、買いもん一緒に行こう。
それならいいだろ？
前に一回行ってるし。
午前中に帰ってくるから。」

どうしても譲らない智くんは、慌ただしく出かけて行った。

この時、気が付けばよかったんだよ。

早い時間に出かけた智くんだけど、お昼を過ぎても帰って来なかった。

智くんのことだから、あれもこれもって見ているうちに時間を忘れてしまったんだろうって想像はつく。

仕方ないから、ひとりで買い物に行こうとこの時初めて自分からメールをした。