哀しいくらいきみが好きだから(S.O) (ページ31)

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久しぶりに残業で遅くなって、夕飯になるものをコンビニで買って急いで帰って来た。

年度末も近くなってきて、残業が増えてくるのはわかってるから憂鬱。

体調も完全に戻ったわけじゃないから、食生活が不規則になるこの時期はちょっと心配。

何より怖くて食べる量が減ってしまうから。

それでも少しでも食べて、お風呂入らなきゃ・・・。

そんな焦りで小走りになりながら帰って来た。

「！」

マンションの入り口の階段に黒づくめの人が座ってて、驚きながら足を止めた。

膝を抱えて、俯いて頭を膝につけて見えないようにしてる。

こんな冬の夜遅くに何やってるんだろう？
不審者？
それとも誰かを待ってるのかしら？

そう思いながら、黒づくめ・不審者・待ってるっていうワードに覚えがあって。

「人を待ってるんで・・・気にしないでください。」

俯いてても人の気配に気づいたみたいで、聞いたことがある声が聞こえてきた。

「・・・大野・・・くん？」

もしかしたらっていう思いで、恐る恐る名前を口にしてみる。

エントランスからの明かりで固まっているように見えたけど、それも一瞬。

ゆっくり顔を上げた大野くんと目が合った。

「！・・・何やってんですか？
いつから・・・。」

思わず彼の目線に合わせてその場にしゃがみ込む。

「・・・わかんない。」

「とにかく部屋に・・・。」

「・・・でもこんな遅く・・・。」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ？」

こんな寒空に外に座ってた人を追い返せるわけない。

何でこんな夜にって疑問だったけど、そんなの後回し。

とにかく早く暖かくしないと、風邪を引いてしまう。

少し強い言葉で言ったら、渋々立ち上がった。

一応周りを確かめて、階段を上がって振り返るとゆっくりついてくる大野くん。

もう！
何でそんなにのんびりしてるの？

一秒でも早く部屋に入れてあげたくて、思わず大野くんの腕を掴んで歩き出した。

「おぅ！」

びっくりしたような変な声を出したって、放してあげないんだから。

エレベーターも廊下も、鍵を開ける時まで大野くんの腕を掴んだままで、ドアを開けて部屋の中に彼を押し込んだ。