哀しいくらいきみが好きだから(S.O) (ページ4)

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会社に電話を入れて、ビルの入口まで誰かに迎えに来てもらうことにした。

今日はもうこのまま帰りたい気分だし。

電話が終わると

「もしよかったら、このタクシー乗って帰らない？」

隣の大野さんが言って来た。

慣れて来るとどこかで聞いたことある声だなぁって感じる。

微かに香る香水？

でも、意識は熱をもってきた足首に行ってて、それ以上考えさせてくれない。

「え？」

「さっきの感じだと・・・電車に１人で乗って帰んの大変そうだから。
おれが降りたら、会社にまた迎えに行ってもらって乗って帰ったら？
このタクシー会社、契約してるから請求は全部こっちに来るし。」

「・・・いゃ・・・そこまでして頂くのは・・・。」

「でも無理でしょ？
それとも・・・送ってくれる人がいるなら、それはそれで・・・。」

「・・・。」

心の中にある人が浮かんだけど、このまま帰ろうとしてるのに送ってなんてもらえない。

悪いとは思うけど、甘えてしまおうかな
タクシーをつかまえるのも大変だし・・・

「・・・本当に・・・いいんですか？」

「もちろん。」

「・・・ありがとうございます。」

雪のせいで混んでいて、いつもより時間はかかったけど無事に会社に到着。

ドアが開いたから出ようとしたら

「１時間後ぐらいでいい？
混んでるみたいだから余裕見て。」

「はい、わかりました。
ありがとうございました。」

その時間で部長に報告と・・・仕事の段取りをつけてちょうどいいかも。

雪のない場所に停めてくれたみたいで、ゆっくり足を庇いながら車を降りる。

「本当にごめん・・・なさい。」

そんな大野さんの声が聞こえたから、もういいですって意味を込めて頭をさげた。

大野さんを乗せたタクシーを見送ってると、

「柚木さん！
大丈夫ですか？」

声をかけられた。

振り向くと同じ課の新入社員くん。

「おはよう。
それがね・・・あんまり大丈夫じゃないの。
手、貸してくれる？」

足を引きづってるのを見た彼が、手を差し出してくれる。

「どうぞ。」

「若い子じゃなくて、ごめんね。」

そう言いながら、大野さんが差し出してくれた手がきれいだったななんて思い出していた。