哀しいくらいきみが好きだから(S.O) (ページ14)

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今日は会社に行くつもりで支度をした。

大野くんからは夕べのうちに

『明日、朝行くけど会社行けそうですか？』

ってLINEが来ていた。

『はい、出勤するつもりです』

『何時頃行けばいいのかな？』

『多分・・・８時頃で間に合うと思います』

『了解。
タクシーん中で待ってるから出てきてください』

『はい、ありがとうございます』

敬語とタメ語が混ざってる文が、大野くんの戸惑いを表しているように思えた。

時計を見て、部屋を出る。

普段からヒールの高い靴は履かないけど、ローヒールでもちょっとまだ怖い。

なので思い切ってスニーカで。

歩く姿でケガしてるのはわかるだろうし、同じフロアーの人達はみんな知ってるから。

出来るなら湿布も貼っていたいほどなのよ。

ゆっくり歩いて外に出るとちゃんとタクシーは停まってて、近づくとドアが開いた。

中を覗くと

「おはよう、ございます・・・。」

おなじみのキャップにマスクっいう眠そうな大野くんがいた。

「おはようございます。」

大野くんとタクシーの運転手さんに言う。

大野くんの横に座ると、タクシーは走り出した。

「だいぶ歩けるようになったみたい。」

大野くんの言葉が自分に向けられてるって気付いてハッとする。

「え・・・あ・・・はい。
おかげさまで・・・。」

「でも、スニーカーだ。」

そんなとこまで気にしててくれるなんて、印象が変わる。

「捻挫なんて初めてなんで・・・癖になりたくないんです。」

「・・・ごめん。」

「あ・・・そうじゃないんです。
責めているわけじゃなくて・・・。
ごめんなさい・・・。」

「何で柚木さんが謝んの？」

「だって・・・大野くんだって痛かったでしょ？
こうして送り迎えしてもらって・・・もう充分です。
こんな朝早くにありがとうございます。」

あの大野くんと２人でタクシーに乗ってるなんて、夢を見てるんじゃないかって思う。

そして、トップアイドルなのにその欠片も見せない普通の姿に、胸が苦しくなった。