哀しいくらいきみが好きだから(S.O) (ページ1)

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昨日降っていた雪は朝にはしっかり凍ってしまった。

車道はまだいい。

都心の道路だからひっきりなしに車が通るし、回復した天気のおかげで太陽が当たってる所は少しずつ溶けてきてるから。

まずいのは高いビルが立ち並ぶ場所とか、一本奥に入った横の道。

そして歩道。

最近は降ってるうちから雪かきをして、朝には自分ちの前とか店舗の前だけ最小限に留めてるなんて場所もあるけど、今私が歩いてる道はまずい方。

大通りから一本入った道の歩道。

仕事の関係で取引先の会社に直行、つまりまだ雪の日用の出勤スタイルのレインブーツとGパン。

これから電車に乗って会社に向かうんだけど、行きも帰りも雪かきのされてない氷の道を歩くのは時間がかかって仕方ない。

レインブーツっていっても普通の靴じゃビシャビシャになっちゃうからっていう理由で履いてるだけで、サッサと歩けるだけの機能は・・・ない。

それでも頑張って歩いてもう少しで大通りっていうときに、建物から出て来た人の

「危ねぇ！」

っていう叫びにも似た声を聞いて、次の瞬間身体に衝撃を受けて、滑って、思わず目を閉じて

「あ！」

気が付いたら転んで、また身体に痛みが走った。

「・・・っ」

誰かの声にならない声のようなものが聞こえたけど、今は自分のことで精一杯。

身体を支えてる手首が痛むけど、目を開けながら今の自分の状況を確かめた。

「・・・だいじょう・・・ぶ？」

こもった男性の声は、私に向けられてるみたい。

その人はサッと立って、私に向かって手を差し出して来た。