猫かぶりの西谷さん (ページ30)

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第30話ページ30

貴「お、おう…何にも？」

そう言って今更勢いよく背後に隠すと
「おい、見えてるから」と飲み物ののせたお盆を机の上に置き膝出しでずりずりと近づいてくる

貴「く、来んじゃねぇぶん殴るぞ」

黒「そう言える立場かね」

貴「戻す…戻すからこっち来んなトサカッ！！」

それを言い放った直後床に押し倒されて
ノートも奪われて俺の負け…認めたくないけど

やっぱり男の力と女の力とでは差がある
これでも筋肉ある方だとは思うけどな…

貴「…お、重…ッもう退いてくれ…悪かった」

黒「この事内緒な」

視界には天井とテツの焦ったような表情だけが映る
…んだこれ、少女漫画みてぇな…

貴「分かったから退けって」

黒「…お、おう」

また顔を赤くしてゆっくりと退いたのを確認して
体を起こす

貴「そんなにそれ見られんの嫌だった？」

そう尋ねると「いや、真面目だとか思われると恥ずかしくてな」と言いつつノートを机の引き出しの中に入れていた

…

黒「飯作るから大人しくしとけよ？」

貴「ハイハイ、漫画見てて良い？」

黒「おぅ」

出て行ったのを確認してから棚から適当に漫画を手に取りベッドを背もたれにしてペラペラと見始めた

…バレー系の少年漫画が多いな

暫く読んでいてふとスマホを確認すると夕から
何件か連絡があり思わず顔をしかめる

内容は「どこに居るんだ」とか「迎え行くぞ」とか
そういう類。

…説明が面倒で「親に聞け」とだけ送り
その後は無視することにした。

ちょうどテツが「机片付けとけ」と
声をかけてきたため、漫画を片す。

お盆の上に置きっぱなしだった飲み物も机の上に置き直し、お盆を返す為にはキッチンの方に行くと
エプロン姿のテツがちょうど味噌汁の味見をしていたところだった

…なんか面白いな

貴「これどこに置いときゃいい？」

黒「ん？そこに立て掛けとけ」

言われた通りに立て掛けてから戻ろうとする俺の
服を掴み寄せて「飯どれぐらいがいい？」と聞かれた

「多め」と言うと「あいよ」と皿によそい始める

なんかこれだけだと…

貴「新婚みてぇだな」

その言葉にいきなり顔だけ振り返ったテツの顔は
これまでにないほど真っ赤で「は？え、いや」とか
言葉を漏らしていた

貴「いいオカンになれるぞ」

黒「オカン！？」

何を期待してやがったんだこいつ…

鼻で笑うと「少なめにしてやる」とか言いやがるもんだから「多めにしろ」と言い争い。

…まぁ少し楽しいけどよ