Toxic Boy . Ⅱ (ページ7)

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お昼休み。いつも通りデスクでご飯を食べようとした時、社内用メールで個人的に送られてきたメール。差出人は最近何かとお馴染みのあの子だ。

【3F、1番奥の倉庫室に来てください。1人で】

ご丁寧にその下には、見たら削除してとの指示まで書いてある。…これが女の恋心の恐ろしさというものなのか、と自分のことなのに他人のように思ってしまう。

「あれ、A出るん？珍しいな」
『うん、ちょっと』

康二くんに声をかけられたが、適当にあしらって外へ出た。扉が閉まる時、深澤さんがこちらを見ていたのに気付いたが、気付かない振りをした。我ながら、そういう所は上手だと思う。

エレベーターに乗り込み、3階のボタンを押す。普段ひと通りの少ない、荷物を置くためだけの倉庫室。使う人なんかめったにいない。廊下を奥まで進み、部屋の前で足を止める。数回ノックをすると、どうぞと可愛らしい声が聞こえた。

『…お疲れ様、です』
「お疲れ様です」

壁にもたれ掛かるように立ち、自分のネイルを見るだけで視線をこちらに移すことも無く答えた。

『私になんの御用でしょうか…花村さん』
「え〜？もう分かってるんじゃないですか？」

初めて視線が会う。深澤さんに見せるような可愛らしい面影は無い。嫉妬と憎悪。朝、目があった時に感じたものと、全く同じものを感じた。

「この前、辰哉くんとの関係…職場の人って答えてましたけど、嘘ですよね？」
『なんでそう思うんですか？』
「休日のショッピングモール…誰か見てるとか思いません？2人共不用心」

液晶画面に映ったのは、お弁当箱を選ぶ深澤さんと私の写真だ。背筋が凍るとは、この事だと思う。
以前康二くんに見られたのとは訳が違う。だってこの子は。

「辰哉くんって優しいでしょ？前の彼氏にこっぴどく振られた時、屋上で泣いてた私に声をかけてくれたの。始めはお互い埋めるだけの関係だった。でも会う度に好きになるのが止められなかった。好きなのに、それを伝えたら彼…恋人は要らないって言うから。だからそれでもいいって我慢して、取り繕って、求められるだけで嬉しかった。なのに…あなたが邪魔した」

ジリジリと近づく距離。

「この前も辰哉くんからホテルに誘ってきたくせに…部屋に入った瞬間に言われたの。もう辞めようって。忘れられない子がいるって言った。てっきり前の彼女の事かと思ったのに…っ！」

バチンと乾いた音が響いて、ジリジリと焼けるような痛みが頬に走る。…だから恋愛はめんどくさい。