番外編 ページ24
『…なんでだろ』
鏡を前に思わず口に出た疑問。
辰哉くんとはあれから順調に交際が始まった。
寝る時は手を繋ぐしキスもする。
今までのプレイボーイぶりはどこ行ったの？ってくらい
優しくて、甘やかしてくれるんだけど。
(1回もそういうこと、してない)
結局付き合ってからも身体を重ねたことは無かった。
彼の好きそうなショートパンツの部屋着も買ったし、
なのに手を繋いでなかよくおねんねするだけ。
『魅力ないのかな』
「なにがぁ？」
自分の姿を見ながら独り言を零した時
いつの間にかドアに手をかけてこちらを見ていた彼。
『なっ』
「全然戻ってこないんだもん。寂しくて来ちゃったあ」
ふにゃっと笑った辰哉くんに不覚にもドキドキする。
セットしてない前髪が目にかかって、なんだか色気を纏っていた。
「行こ、冷えちゃうよ」
リビングまですぐそこなのに、わざわざ手を繋いで歩く。
ソファに隣同士に座って、これ一緒に見よーよとテレビをつけた。
こんなに近いのに、なんだか遠い。
それが切なくて、少し握る手を強めると
んー？と言いながら、私の手をにぎにぎと弄ぶ。
『辰哉くん』
「どした？」
『……私って、魅力、ない？』
普通、恋人には触れたいって思わない？
そう思えないってことは…そういうことだもん。
そんな私の顔を、さっきとは違う真剣な顔で見つめた。
「…っはー」
『……辰哉くん？』
「あのねぇ、お兄さん結構頑張ってんのよ？」
『頑張る？』
「…良いってこと？こんな風に触っても」
手が解かれて、肩を押された。
いとも簡単に組み敷かれて、彼にじっと見下ろされると
一気に恥ずかしくなって、思わず目を逸らした。
「だぁめ、こっち見て？誘ったのAだよ」
ツー…と太ももを撫でる指がくすぐったくて身をよじると
満足そうに笑った後、キスをした。
「魅力無いわけ、ないでしょ」
『っ』
「大事すぎて、触れなかったの」
少し困ったように笑った。
『辰哉くんには、触って欲しい』
「うーわ、悪い子」
『悪い子でいいもん』
「…ほんっと、俺の事大好きだねえ」
俺はもっと大好きなんだけど。甘ったるい声でそう言う。
「ベッド行こ」
細い腕で軽々と私を抱いて、ベッドへ優しく下ろした。
その首に腕を回すと驚いたようにこっちを見て、お得意の悪い顔。
『…っん』
「やっば、かわいー…」
そこからはもう、すっかり彼のペースで。
(ちょっと、辰哉くん待って)
(あは、俺はまだまだ足んないんだけど？)
終わり
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作者名：蒼 | 作成日時：2024年3月16日 3時
