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一緒に手を洗って、うがいして、リビングへと向かった。
ソファに座って嬉しそうにお弁当箱を開ける彼。頂きます、と綺麗な手を合わせて口にほおばった。
「んー！うっま」
『味、大丈夫ですか？』
「うん、めっちゃ好き、前も美味しかったけど、今日もんまい」
口の端に付けたまま、一生懸命食べる姿があまりにも可愛らしくて笑う。色気振りまいたり、愛嬌振りまいたり、忙しい人だなって思うけど、どんなところも結局好きなのに変わりはない。
「……はー、うまかったぁ」
相変わらず早食いなこともあって、10分しないうちに完食してしまった。
『ちゃんと噛んでます？危ないよ』
「それ、佐久間にも言われんだよねぇ」
『じゃあ余計に治してください』
「はぁい」
その会話のあと、少しだけ沈黙が流れた。息をするのも躊躇うような、謎の緊張感。
「…もしかしてさ、緊張してる？」
『…まあ、はい』
「俺もね、めっちゃドキドキしてんの。手貸して？」
優しく握られた手が、彼の胸に当てられた。その心臓が確かに、早く脈打ってるのがわかる。
「俺がいくら言っても、信じて貰えないかもしれないけど。Aちゃんが好き。めっちゃ好き。」
そんなの目を見たら分かるのに。必死に言葉にしてくれるのが嬉しくて。
「＿＿＿俺の、彼女になって」
答える前に、その身体に抱きついた。驚いたようだったけど、受け止めてくれて、背中にその腕が回る。
「……これ、OKってこと？」
『私、誰にでも抱きつく女じゃありません』
「ふは、そっか。そーだよね」
じゃあもう、俺の彼女だ。そう言ってまた、触れた唇。
あなたに出会って、毎日が目まぐるしくて。
最初は嫌いだったのに、気付けばどんどん惹かれて、溺れて。
傷ついたこともあった。素直になれなくて苦しかった。
だけどあの日怖くなって遠ざけた誰かを想う気持ちを、思い出させてくれたのはあなただった。
『……大好き、辰哉くん』
好きな人に、大好きだと言える幸せ。
傷ついて遠回りしてきた2人が、やっと掴んだもの。
おでこをくっつけて、笑いあった。
『もう、よそ見したり夜遊びは禁止ですね』
「あったりまえじゃん。俺Aちゃんしか見えてないよ」
そう言われても、こんなに素敵なあなたに惹かれない子はいないはずだから。
『ねえ、辰哉くん』
「ん？」
やっぱりあのハンカチ、返さなくていいよ。
そう言って私から、キスをした。
Toxic Boy . END
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作者名：蒼 | 作成日時：2024年3月16日 3時
