Toxic Boy . Ⅱ (ページ3)

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「そーいえば明日土曜日だけど」
『…あ』
「どーしよっか？」

ほんのり桃色に染めた耳と頬。お酒を飲むとすぐ赤くなるとさっき言っていた。
手は未だ繋がれたまま、彼のポケットの中に入っている。

『デート、してもいいですけど』
「おお、強気だあ」
『その前に花村さんのことちゃんと説明してください』

その場に立ち止まる2人。私の家まであともう少しの所。

「別になんでもないよ」
『なんでもないって』
「俺は誰の事も好きになんないから」

だから契約違反では無いでしょ？と淡々と告げた。
誰も好きにならない。その言葉に迷いはなかった。

「あの子とは、お互い都合のいい関係なだーけ」
『…花村さんは、そうじゃないと思います』
「まあ、そーかも」
『気付いてるのに応えてあげないんですか』
「第一、俺はあの子の事好きじゃないし。俺の事好きになっても幸せにしてあげれないしね」

あの子と今以上の関係には絶対なんないよ、と笑った。

『…これ、返します』

バッと突き出した、紙袋に入ったままのマフラー。
ずっと返せずにいたけど、持っている方が今は心苦しい。

「あ、貸してたやつだ」
『遅くなって、すみません。ありがとうございました』

その紙袋を空いている手で受け取ると、屈んで私の顔を覗き込む。
いきなり近くなった距離にたじろいだけど、手を握っているせいで離れることは出来なかった。

「もう返しちゃっていいの？」
『っ！』
「俺のマフラー、持ってたいってどっかで思ってたんじゃない？」

…図星だ、返そうと思えば返せた。タイミングが無かったなんて嘘だ。
これをみれば…初めて家に行って、ラーメンを食べた事も、このマフラーを貸してくれたことも、深澤さんの甘い匂いも、鮮明に思い出せるから。

「でも俺にとってはよかったかも」
『…へ？』
「洗ってくれたんでしょ？」

紙袋から取り出したマフラーを、寒いから付けちゃおーと取り出した直後、解かれた手を少し寂しく感じていたのも束の間。

「俺のだぁーい好きな匂いがするもん」

両手で私の頬を包んで、フワッと笑った。

『〜〜〜っ明日のことは！後で連絡します！』
「あ、ちょっと」
『もう着くから！ここで大丈夫です！ありがとうございました！』
「あは、必死なのかわいー。気をつけてねえ」

スタスタと1人歩き出す。途中後ろを振り返ると、ポッケに両手をいれてこちらを見ている彼と視線があった。

『寒がってたくせに…』

そんな彼を見て、また胸がぎゅっと苦しくなった。