Toxic Boy . Ⅱ (ページ18)

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(T side)

「……辰哉くん」
「ごめんね、昼休みに呼び出して」

人気のない階段、彼女と向き合った。呼び出したのは俺だ。

「前も言ったけど、結の気持ちには応えらんない。…なのに曖昧にして、関係続けて、傷つけたのは俺だから、ごめん。」

既に泣きそうな顔をしている彼女を見ながら、告げる。きっとその愛らしい泣き顔を見たら、慰めたくなる男はたくさんいるんだろう。残念ながら、俺がそう思う女の子はもう1人だけだ。

「どうしてなの？どうしてあの子なの？私なら辰哉くんを支えてあげられる。辰哉くんが求める彼女になれる。前の人みたいに、浮気だってしない。お互い辛い思いした同士、支え合ってきたのに、どうして？」

初めて好きだと言われた日、前の恋愛の話を彼女に打ち明けた。だから恋人にはならないと、宣言した。

「…俺はね、ずっと探してた子がいんの。名前もわかんなくて、顔も覚えてなくて。その子ね、弱って、体調崩して、超かっこ悪い見ず知らずの俺の事を助けてくれたの。それって、誰でも出来ることじゃない。誰のことも信じられなかった俺は、それですっげえ救われたの。お互い気づかないまま再会して、めっちゃ汚い真似して、傷つけて、弄んだ。…それでも逃げずに向き合ってくれた。」
「そんなの私だって…！」
「結はさ、多分俺のことが好きなんじゃないよ。泣いてた結に話しかけたのが''俺''だっただけ。…どっかでさ、わかってるんじゃない？」

図星だったんだろう。唇を噛み、下を向いた。恋人に振られたもの同士、穴を埋めようとして埋められなかっただけ。俺じゃない、慰めてくれるなら誰でもよかった。
もうその頭を撫でることも、抱きしめることも、二度とない。もう俺は、そんなしょーもない恋愛ごっこからは卒業するって決めたから。

「…結の存在が、支えになってたのは確かだよ。傷つけてばっかで、最低でごめん。今まで、ありがとう。」
「…っ、ばかじゃないの」
「うん、俺めっちゃ馬鹿だと思う」
「…でも、私も馬鹿だった。辰哉くんの言うこと、当たってるから。優しくしてくれて、そんな優しさに甘えてただけ。手離したくなかっただけ。あと…殴ったりして、ごめん。あの子のこと」

じゃあね。
止まらない涙を流したまま、先に扉を開けたのは彼女だった。

(……ほんっと、最低な奴。俺って)

思わず頭をぐしゃっと掴む。ちゃんと、ケリつけたよ。
これであの子と、向き合うことも許してもらえるかな。