Toxic Boy . Ⅱ (ページ2)

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「俺なあ、ほんっまに皆のことすきやねん」
「俺もぉ！俺も好きだよー！」
「佐久間は通常運転として、康二っていつも酔うとコレ？」
『…はい、いつも』

深澤さんとはまた気まずいまま、一緒に戻ってきた個室。
私たちがいなくなった数十分で2人は出来上がり、岩本さんは縋るような目で私たちを見つめた。

「ねぇ康二ってば、ちゃんとしてよ」
「ふっかさぁん！俺は許さへん！すーぐ女子をたぶらかしてぇ！」
「あーもー！はいはい」

くっつきたがりの康二くんが、帰ってきた深澤さんにべったりで
私と岩本さんの会話は聞こえていない様子。

「…ふっかの事さ、悪く思わないでやって」
『深澤さんの事？』
「ん。本当に本気で探してたよ。''ハンカチの子''」

実は、俺があの後救護室に運んだんだけど。と付け足すように言った。

「珍しいなって思ってたんだよね。アイツがそんな事覚えてんのも」
『そうなんですか』
「…前の恋愛で、色々あったんだよ」
『前の？』
「そ、詳しくは言えないんだけどさ。それから遊びまくりだったし。だから、誰か1人の子探してんの、珍しいと思ってた」

色々、2人にしかわかんない事もあるんでしょ？と
私の肩をぽんと叩く。岩本さんはよく人を見ている。
何かを察してるようだけど、それ以上は言及しなかった。

両側から佐久間さんと康二くんに抱きつかれる深澤さん。
イヤイヤ言いながらもどこか嬉しそうに笑うその顔を見た後
頼んだばかりのカシスソーダを1口飲んだ。

・

･

「んじゃ照とこーじは、俺が責任もって連れて帰るからぁ！」
「うるせえよ、早く乗れって」
「A〜また月曜日会おなぁ」

顔を真っ赤にしてヘラヘラ笑う酔っぱらい2人を
お構いなくタクシーに突っ込む岩本さんは
最後に気をつけろよ、と助手席から男らしく手を振った。

『…じゃ、私もここで』
「ちょいちょいちょい」

……死ぬほど気まずい。故に逃げようとしたものの逃げられず
私の腕はいとも簡単に捕まった。

「送るって」
『いいです』
「なぁんでよ」

俺、今はAちゃんの彼氏だよ〜？なんて。
……ずるい。ずるいのに。
結局好きだと自覚してしまっては、そんな声も笑う顔も、好きだと思ってしまう。所詮、好きになった方が負けだ。

＿＿＿好きなのに、この関係で居てもいいのかな。

「はい、手ぇ貸して」
『わっ』
「寒いからね〜、ポッケ暖かいでしょ」

行くよ〜と有無を言わさず歩き出す。
タクシーに乗せて帰さない所も、やっぱりずるい。