Toxic Boy . (ページ40)

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「ハンカチの子ねえ…わかんないままなのよ」
「あれから見つかってねえんだ」
「何やねん！そのトキメキ展開！」
「そーだそーだ！ふかさわの癖に！…ん？ハンカチ？」

そーいやハンカチの話、Aちゃんともしたねえ。なんて
佐久間さん、ちょっとそのパス、今はまずいかも。

「ハンカチ？」

聞き逃さなかった深澤さんが
私の方へ、ひょこっと顔を出して問いかけた。

『あ…えっと』
「お守りだった大事なハンカチ、失くしたんだって」
「ほぉん？昔からドジやなあ」
『…うるさい』
「聞き忘れてたけど、どんなハンカチなの？
俺らも、会社で見つけれるかも知んないし！ね！」

その佐久間さんの優しさが今は痛いが
答えるなと言う方が難しい雰囲気。嘘をついても仕方ない。
…私の記憶も曖昧だし。
あれが深澤さんと決まった訳ではない。
なんせ何年も前だ、私も忘れていたくらいだから大丈夫な筈。

『花柄の、白いハンカチです。…実は母に貰ったもので』
『私の事だし、帰り道か何かで落としたんだと思います』
「ええ！？なんでさっきこの佐久間さんに言わないの！？」
『優しいから、気にさせちゃうかと』
「んもー！いいのよ心配かけて！」
「オカンにもろたやつかぁ、それはショックやなあ」
「…今度、ハンカチ買ってあげるわ」
『岩本さんまで…お気持ちで充分です』

花柄の白いハンカチ。そう言った時
深澤さんの視線が一瞬動いた。珍しく、動揺した顔。
…でも、実際あの時の病人が深澤さんだったとして
だからってどうなる？

今日はグルグルと考えることばかりだ。全て深澤さんの事。

『すみません、お手洗い行ってきます』

1人で考えるのには、ちょうどいい。
席を立って、トイレとは真反対の入口の方へ向かった。

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『……寒』

風が強い。酔い覚ましには丁度いいが
室内との温度の差に、思わず身震いする。

『マフラー、どうしよう』

返すタイミングは未だ掴めていない。
今も、テーブル下の足元に置かれたまま。
冷たくなった指へ白い息をはいた。

まさか、あの時の相手が深澤さんだったとは。
言われてみれば…黒髪、重ための前髪に少し襟足が長くて。
あと…少し猫背だった？

そんな時、震えたスマートフォン。

【追いかけてきたのに、おねーさんトイレに居ないんだけど。わら】

…別に、話すことなんかないのに。
返すことなくポケットにしまって、お店の中へと戻った。