Toxic Boy . (ページ36)

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「みんな恋人とかいないの〜？」
『ブッ』
「ワオ、Aちゃんが吹き出すなんて珍しい」

昼休み、珍しく皆自分のデスクに付いている。
私はいつも通りお弁当。康二くんも今日は作ってきたらしい。
佐久間さんは、嫁？を迎え入れすぎたとかで
自作のおにぎりを持参していた。
サイズが規格外なのが佐久間さんらしい。

1つ違和感なのは
女性物の綺麗なお弁当箱にバランスよく詰められたおかず。
しかもそれを手にしてるのが、深澤さんだってこと。

『…すみませんいきなり何かと思って』
「いや〜浮わついた話聞かないからさぁ」

ふっか以外はね！と最後に一言つけると
うるせーよと突っ込む深澤さん。

今日だって何そのお弁当、と言われると
俺くらいになると食べて欲しい子が沢山いんのよ、と
自慢げに言っていた。やかましいわ。

仕事も今まで通りスムーズに進めた。
康二くんと深澤さんは最初こそ気まずそうだったけど
昨日はごめん、と謝った康二くんに
別に気にしてないよ、と笑顔で応えていた。

『私は恋人とか、好きな人…とか、別にいないので』
「え〜せっかく可愛いのに。こーじはぁ？」
「俺の恋人はカメラやもん」
「うっわつまんね」
「人のこと言えへんからな！このフィギュア収集変態男！」

やいやい言い争う2人は置いといて
私が気になるのは彼のお弁当だ。

もしかして、花村さん？

お弁当を作ってもらったということは
家に泊まったという事だ。
あんな可愛らしいお弁当箱を深澤さんが持ってるわけない。

「んー？どした？」
『確かに珍しいなって』
「気になる？」
『別に』

素っ気なく答える私に、なんだ〜と笑う深澤さん。
こういう所が、私の可愛げの無いところだと思う。
素直に、気になりますとか
誰が作ったんですか？とか聞けばいいものを
意地ばかりはってしまう。

「ん、うまぁ」

いただきますと小さく言った後、一口食べて感心したような声。

…私のお弁当だって美味しいもん。

今日は上手く焼けた玉子焼き。
口に入れると少し甘じょっぱくて美味しい。

「なあA、おかず交換しよや」
『何それ、女子高生か』
「ええやん、醍醐味やん！！」

黙々と食べていると、ガラガラと康二くんが椅子を寄せてきた。
そんな私たちを見た深澤さんと、佐久間さん。
そちらへ視線を向かせると、バチッと目が合った。

なによ。その愛の詰まったお弁当でも食べてなさいよ。

そう思いながら顔を背けた。
私の足元には、未だに返せていないマフラーが置かれていた。