Toxic Boy . (ページ34)

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なんか今日、だきしめられてばかりだな。
どこか冷静にそんなことを思う。
細い割に深澤さんよりもしっかりしてて、
あ…そういえば、筋トレ始めたとか得意げに言ってたっけ。

『…康二くん大丈夫だよ』
「でも」
『私、別に深澤さんの事好きじゃないし』

自分で言っておいて、何故かチクッと傷んだ胸。
ほんまに？と心配そうに覗き込む康二くんに
ホントだよ、と笑ってみせると
少し安心した顔をして、身体を優しく離した。

『ちょっとだけ、筋肉ついた？』
「おっ、わかるか？」
『いやー…やっぱ気のせいかも』
「おい！」

辛気臭いのはもうやめだ。康二くんとも仲直り出来たし
隠し事だってもうない、スッキリしたじゃないか。
だから、大丈夫。…大丈夫だもん。

『じゃあ、今日はありがとね』
「おう！また明日やな、ちゃんと寝なあかんで」
『康二くんもね』

気づけば、マンションの下に着いていた。
pm 23:12 。部屋の鍵を開けた。
ドアがなんだか、いつもより重く感じる。

…今頃、あの2人は。
いやいやいやいや、何想像してんの。

1人でブンブンと頭を振った。
別に、別の人とそういうことはするな、みたいな
そんな決まりがあったわけじゃないし？
ただ、お互い好きな人が出来たら終わりってだけだし？
深澤さんにとっては、私を使うのは女避けの為、だし。

…何よ、女避けとか言いながら
別の女に手出すんじゃないわよ。

コップに注いだ水を一気に飲み、少し強めにグラスを置く。

『…早くお風呂入って寝よ、うん。』

シャワーを浴びて、歯磨きをして、ベッドに潜る。
頭からずっと離れない、ホテルへ入る深澤さんの姿。

八つ当たりで、枕元のぬいぐるみを叩いた。
…2回目のデート、寄り道したゲームセンターで
私に似てるからと言って取ってくれたウサギのぬいぐるみ。

『…翻弄されてるのは私の方じゃん』

自覚はしたくない。しないつもりだった。
もし仮に、この感情に名前をつけるとしたら＿＿。
そこまで考えて、やめて。
毛布を頭まで一気に被った。

目を瞑ると、だんだんと睡魔が襲う。
そこから…何を考えてたっけ？気付けば、眠りについていた。