Toxic Boy . (ページ33)

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「…仮の彼氏ィ！？」
『バカ、声でかい！』

いつもの居酒屋。
康二くんには1から事情を説明した。
ホテルで夜を明かした事、未遂だった事、
キスした事、契約した事。

頭を抱え、ため息を着く康二くん。
……当たり前だ、我ながら阿呆だと思う。

「あんなぁ…そんな簡単に許したらあかんで」
『いきなりだったんだもん！仕方ないでしょ！』
「そこはな！！瞬発力で避けんかい！」
『……うぅ』
「……まあでも、一応未遂なんやろ？良かったわ」

にしても、ようわからん提案よな。と
片手に持ったジョッキを口に当てた。

「あの人何考えてんねやろ」
『私もわかんない』

同じようにジョッキを口に当て、一気に飲み干した。
炭酸が流れ込んできて、その刺激に目を瞑る。

「…Aは練習したいん？恋愛のその…色々」
『勢いで返事した所もあるけど…まあ、一理あるかと』
「じゃ、俺で練習してよ」

お得意の冗談かと思って顔を見ると
真っ直ぐ向けられた視線。

『…康二、くん？』
「ふっかさんは、やめて」
『なんで、』
「…Aが傷つくだけや」

それはご最もな意見だと思う。

''職場の子ってだけじゃん''

自分でその前は、仮にも彼氏だなんて言って慰めてた癖に。
…契約に乗ったのは私だ。でも、
なんとも思わない相手とキスして、手を繋いで、抱きしめるくらい
あの人にとっては、息を吸うほど簡単で当たり前の事なんだ。

『…ん、考えとく』
「そんな暗い顔したら、ブスに拍車かかんで」
『ひっどい！』
「嘘やで、Aは可愛ええよ」

先程の顔とは変わり、いつも通りの康二くん。
もう今日は考えないようにしよう。
そう思いながら、唐揚げを1口頬張った。

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「ごめん、遅なったな」
『んーん、ていうか良かったのに』
「歩いて帰るなんて言われたら、ほっとけへんやろ」

危ないからな〜と、同じペースで歩く。
平日の夜でも、繁華街はキラキラしていて
仕事帰りのサラリーマンや色気付いた男女が行き交っていた。

『…あ』
「…おい、ほんまに？」

つくづく、今日はタイミングが悪いと思う。

ラブホテルへの入口、腕を組みながら入っていった男女。
＿＿＿目にかかる前髪、白い肌、眠そうな目、猫背。
毎日見ているんだから
服装が違うくらいで間違えるはずは無い。

隣にいたのは…花村さん、だった。

「A」

それ以上2人の姿を見ることは無かった。
康二くんに、そっと抱き寄せられたから。