Toxic Boy . (ページ28)

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(K side)

「ッあ〜〜！！！！クッソ」

彼女が去った後、屋上で1人頭を掻きむしる。
そんなつもりじゃなかった。

何知らん顔して、いつも通りおはようって言って
しょーもない話して、一緒に帰って。
そうするつもりだったのに
いざAと、ふっかさんの姿を見た時に
あの日見た光景を思い出して、言葉が出なくなった。

今はあの二人を、見ているだけで辛い。

なんで土曜日2人でおったん？
なんで手、繋いでたん？
……なんで俺じゃ、ダメなん？

ただでさえふっかさんの悪い噂は聞いている。
あの人のことで、泣いている女の子も少なくはない。
…正確に言えば、直接的に泣かせた訳では無いと思うが。

だから、嫌だった。
この部署に来た時、Aの隣の席に座った時。
ふっかさんがAさんに話しかけてるのを見る度
本当は不安で、やめてや！って言いたい気持ちを抑えて。

だってアイツにとって、俺はただの友達やから。
それでも良かった。傍におれるなら。
恋愛が苦手だと、
ビールを片手に泣きそうな顔をしていた時だって
都合よく俺を使ってくれたらええのに。そう思っていた。

「…なんでよ、A」

ウジウジして告白さえしていない俺が悪い。
そんなことは分かってんねん。
でもどうしてもこの関係を壊すのが、怖い。

泣き虫な自分が昔から嫌いだ。
ボロボロ大人気なく溢れる涙に
ふざけんなよ、と独り言を零す。

27の男がいい歳して恋愛して大泣きして。
あまりにも滑稽過ぎて呆れる。
……でも。
それだけAが好きだということに、気付けたんやから。

「…っ、マヌケやな、俺」

パンっ、と両手で自分の頬を叩いた。
向き合えよ、ちゃんと伝えんとアカンやろ。
このまま簡単に、ふっかさんに遊ばれて
泣かされるアイツの事なんか見た無いやろ。

彼女の後を追いかける。
乗ったであろうエレベーターは、見慣れた階数で止まった。

「…やめてや、頼むから」

こういう時、悪い勘ほど当たってしまう。
どうか、どうか。
＿＿＿＿ふっかさんにだけは、今、会わんといて。

待ちきれず、非常階段の扉を開けた。
カンカンと激しく鳴り響く足音。
息が段々と吸えなくなって苦しくなるけど
そんなことお構い無しに、走り続けた。

・

・

バン！と扉を開けて、廊下に飛び出した。
その先、閉まりかけたエレベーターの扉の隙間。
俺の願いとは反対に
抱きしめられる、Aの姿が見えた気がした。