Toxic Boy . (ページ25)

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「ちょっと、泣きすぎじゃない？」
『だっ、だって』
「あは、そんなズビズビしなさんな」

俺が泣かしたみたいじゃん、と
眉を下げて困ったように笑う。

一緒に見た映画はラブストーリーものだった。
彼はSFものが好きらしいけど
何が見たい？と、私の好みに文句1つ言わず合わせてくれた。
物語の舞台は江戸。地位的格差のある2人が恋に落ち、
最後は哀しくも心中するというもの。

『悲しいけど、うっ…幸せになったのかな…』
「Aちゃんは感情移入しちゃいがちなのね、かあいい」

そんな私を見ながら、
ちゅーと余ったドリンクを吸う。
彼が上映前に頼んでいたのは、アイスのカフェラテ。

2時間たったのだから、氷は溶けて美味しくないはず。
余ったドリンクが入ったまま返すのが申し訳ないと思ったのか
ゴミを回収していたスタッフさんには渡さず
持ったままだった。

『…それ』
「ん？あ、もう飲み終わったよー」

ゴミはちゃんとポイしなきゃね〜、と
映画館を出てすぐにある、回収ボックスに捨てた容器。

『なんか深……辰哉くんって意外なところあるよね』
「今のはイエローカードね」
『エ''ッ』
「ぶは！何その声、初めてきいた」

悔しい、なんだか少し、楽しいかもしれない。
異性と出かけるなんて、康二くんと飲む程度だった。
昼食でも取ろうか、と歩き出して他愛もない話をする。
大概は、辰哉くんのしょうもないモテ話。

『ふっ……ふふ』
「へ？」
『笑い声、変なんだもん、おっかしい』

途中、キャハキャハと子どものように笑う彼がおかしくって
私も釣られて笑ってしまう。

目的のカフェまでは映画館から15分程。
歩き出すと同時に、当たり前のように繋がれた手。

『…Aちゃんさ』
「ん？」
『……そうやって、笑ってた方がいいよ、絶対。』

そういった顔は、見たことがないほど真剣で
…やめてよ、こっちの意思が揺るぎそうになる。

うるさいです、と軽く小突くと
いてて！といつもの調子に戻った。

「……え？なんで、一緒おるん？」

そんな事を話しながらも、カフェに入る瞬間。
……康二くんに、見られているなんて気付かなかった。