Toxic Boy . (ページ22)

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・2人の時は名前で呼ぶこと
・土曜日は必ずデートする
・どちらかに好きな人が出来た場合、契約は破棄

深澤さんとの契約において提示された条件は3つ。
その後に一言添えられたのは
そういうことはしないから安心して。という言葉。

そんなの当たり前に決まってるでしょ、と
家で1人、缶ビールを開けながら呟く。

今日は退勤後、康二くんといつも通り駅まで歩いて帰った。
金曜日やし飲むか？と誘われたが、
人生の中で1番と言っていいほど
この数日間目まぐるしい日々を過ごしていたのでお断りした。
康二くんにはしっかり休んで欲しいのも、事実。

取りえず、酔った勢いで卒業という最悪の展開は免れた。

27歳。もちろん恋愛をしなかった訳じゃない。
私の事を好きだと言ってくれた人もいた。
付き合った人も、手を繋いだ事もあった。

…だけど怖い。自分の全てをさらけ出すのが。
恋愛関係は脆い。何がきっかけで壊れるかわからない。

ベッドの上で1度言われたことがあった。

''お前のその態度、冷めるわ''

そういう雰囲気になった時、押し倒されて
キスされるなんて事はよくあるパターンだ。
高校三年生の夏、私にもその時が来た。

嬉しいはずなのに、反射的に顔を背けたのは私だった。
受け入れるのも恋人同士なら当たり前。分かっている。
分かっていた、つもりだった。

本当に好きなら、一緒に、傍にいるだけでいいじゃないか。

愛を確かめるひとつの手段、理解しているつもりでも
私にとってその行為は恐怖心を煽るだけだった。
その彼には、次の日別れを告げられた。
身体を許さないだけで壊れるほど、つまらない関係だった。

そうこうしているうちに大人になった。
少女漫画でみる純粋な恋愛なんてものは
夢のまた夢だと言うことを突きつけられる度に
私には恋愛は向いていないんだと
自らが遠ざけた結果がこれである。

この私の気持ちは、きっと深澤さんにはわからない。
あの人の事だ、そんな重い女は嫌いだろうな。

グッと手に持ったビールを口にすると
炭酸と共に独特な苦味が広がった。

テレビで流れる恋愛ドラマ。
物語は終盤で、どうやら上手くいった様だ。
幸せそうに笑い合い、キスをする瞬間
テレビの電源を切った。

『私だってこんな恋愛したいよ』

静かな部屋で、もう一口ビールを口にする。

『…明日は11時に駅前に集合、ね』

タイミングを見計らっていたかのように
送られてきたLINEを見て、ため息をついた。