Toxic Boy . (ページ16)

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pm.17:15。

「ちゃーんとかけてきてくれて、お兄さん安心。」
『あの、私はどうすれば』
「会社でたら、タクシー拾って送った住所んとこ来て」
『…住所？わかりました』
「そんな嫌そうな声ださないでよぉ。んじゃ後でね」

定時と同時に出た深澤さんを確認して
5分後にお疲れ様です！と飛び出した私に
驚きながら、お疲れ様と声をかけてくれた岩本さん。
康二くんに何か叫ばれた気もするが
ごめん。今日は私のこれからの恋愛人生がかかってるのよ。

''すんごい勢いで飛び出してたねえ''

人目につかない、離れた女子トイレに1人籠り
３コール目で繋がった電話。
一言目がそれって…。これだから余裕ぶっている男は嫌だ。

最近の携帯の昨日は便利なもので
LINEを交換してなくても、電話番号さえ分かれば
簡単にショートメッセージを送れる。
電話が切れた後、すぐ送られてきたリンクを開くと
ご丁寧にマンションの住所が載せられていた。

『家はアウトだろ〜〜〜〜っ…』

一人暮らしの男の家。
弱みを握られて、挙句の果てに家にまで？
だが仕方ない。酔っ払って記憶を飛ばした私が悪い。

トイレを出た後、誰もいないことを確認して
会社近くのコンビニにタクシーを呼び出すと
1人乗り込み、送られたきた住所を運転手に伝えた。

・

「いらっしゃーい」
『…お邪魔します』

30分後、シンプルながらも
何故か似合わないぬいぐるみだらけの部屋に私はいた。
クレーンゲームが好きで取りすぎちゃうのよ、と
私の思ったことを見透かしたかのように一言。

どうぞ、と引かれた椅子に腰掛けると
ご丁寧に淹れたてのコーヒーが置かれた。

『あの、いきなり本題なんですけど』
「あは、ほんといきなりだね」
『…昨日、私たちってその』
「そういう''関係''になったか…知りたい？」

暖かいカップを手で弄ぶだけで、口に運ぶ気にはなれない。
目の前に楽しそうに私を見つめる深澤さんがいて
私ばかりが焦っているのがわかる。

思わず口ごもって俯くと
ギィ、と重い椅子が動いた音がした後、視界が影がかった。

いつもの香り。甘ったるい匂い。
＿＿今朝起きた時にも嗅いだ。記憶に残るのが煩わしい。

細い指が、頬をなぞる。少し冷たくて思わず身体が跳ねた。

「想像してるような事はね、してないよ」
『……へ？』

自分でも驚く程間抜けな声が出て、顔を上げると
ふっと優しく笑う顔が視界に入った。

＿＿＿その直後に声が出せなくなったのは
彼がまた、私の口を塞いだから。