Toxic Boy . (ページ15)

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(ほんっとに疲れた…なにより精神的に……)

昼休憩、いつも自分のデスクでお弁当を食べるけど
今日は耐えきれず、逃げるように屋上へ来た。
ベンチもあるし、何より外の空気が冷たくて今は心地いい。

『コンビニに頼っちゃったなー…』

そう言って、冷たいサンドイッチを頬張る。

あの後、康二くんもなんだか元気がないし
深澤さんに仕事を教えるにしても集中できなくて
その様子を見ながら彼には終始ニヤニヤされる始末。

「んね、どうなったか知りたい？あの後」
『へ…？』
「Aちゃん、その事ばっか考えて集中出来ないんでしょ」

そう言って、仕事中ご丁寧に渡されたもの。

''今日、俺が会社出た10分後にかけてきて''

ポケットに手を入れると、ガサッと紙の鈍い音。
見た目とは裏腹に不器用な字体で書かれた電話番号。

今日はまっすぐ家に帰りたいんですけど。
本音を言ってしまうとそうだが、
実際、昨日起きた事を確かめなければいけないのも事実だ。

『…初体験が、酔った上に職場のチャラ男はアウトでしょ』

ああ、もう考えるだけで頭が痛い。

''今、どこにおるん？''

聞きなれた通知音が鳴って、スマートフォンの画面を開くと
向井康二と見慣れた名前の表示の下に書かれた一言。

''屋上だよ''
''一緒、食堂行きたかったんに''
''ごめん、まだ気持ち悪いし酔い覚ましたくて''
''しゃーないな。またあとでな''

トントンと片手で返事を返す。
間髪入れずに返ってきたので、彼も1人なのだろうか。

『…っし、午後からはさすがに気合い入れるか〜』

今日の私たちの仕事の集中力の無さは過去一だと思う。

午前中浴びせられていた鋭い岩本さんの視線と
オロオロした佐久間さんの顔を思い出す。

…岩本さんはまあ仕方ないとして
ごめんなさい、佐久間さん。
私と康二くんの様子がおかしいのも
きっと気付いて、心配してくれてたんだろうなあ。

残ったサンドイッチを頬張って
重い足取りで屋上を後にした。

・

・

「さて、どうしよっかなぁ」

恋愛に深く踏み込む気は無い。
とはいえ恋愛をしたくないという訳でもない。

あの反応。やはり彼女は経験が無いのだろう。
実際彼女を抱くことはなく、同じベッドで寝ただけだ。

俺に抱かれてる所をきっと想像した事だろう。

久々に胸が踊る感覚。また康二に怒られちゃうかなぁ。

まあ、今更止めるつもりも毛頭ない。

まるで新しいおもちゃを手にした子供のように
浮き足立つ気持ちを抑えて、仕事場へと戻った。