Toxic Boy . (ページ14)

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(K side)

おかしい。絶対に。

二日酔いで目が覚めて、いつもより早く出社した今朝。
そんな俺より早く席に着いていたのは
昨日俺の事を介抱してくれた、自身の意中の相手だ。

おはよーさん、と声をかけると
なんだ、康二くんかと言われた。
…なんや、他に会いたいやつでもおったんか？

その後、いつも通り他愛のない話をしている最中でさえ
どこか上の空な様子が気になって、
なんかあったん？と問いかけてみても
なにもないの一点張りなので、それ以上問うことは辞めた。

＿＿簡単に言えば、一目惚れやったと思う。
移動してきて最初に仲良くなったのはAだった。
おしゃべり好きな俺が一方的に話しかけてばっかやったけど、
必死な俺に対して、面白い方ですねと遠慮がちに笑った姿が
とてもとてもかわいくって。…外見的な話ちゃうで？

すぐ恋に落ちたは良いものの、
彼女にとって「なんでも話せる友達」の立ち位置からは
1歩も動けないままで今に至る。

もし彼女やったらなぁ。
休みの日はなにしてんのやろ。
本当は彼氏になって、どんな時でも隣におりたいし
その優しい声で、康二くんが好きって、言ってほしい。
想像するだけで、抱きしめたくなるほどに重症なのは承知の上だ。

そんな事は叶わないまま数年が経って
彼女に彼氏ができない現状に
勝手に安心して居たのも束の間。

先程、その人が来た瞬間のAの様子。
そんな彼女の反応をみた、満足そうな顔。
一瞬だけでも、俺は見逃さなかった。

「でも頑張んないとね？」

''今Aちゃん、俺のことで頭いっぱいだから''

そんな挑発に思わず顔が歪む。
なあ、昨日何があったん？
…ふっかさんと、何が、あったん？

昨日まで、そんな顔で見てなかったやん。
好意とは少し違う。恥ずかしそうな、何かを思い出すような。
無意識なんだと思うけど、ふっかさんが来てから
ずっと、目で追ってんのはなんでなん？

…もしいつか彼女の気持ちに、好意が生まれたとしたら。

そんな最悪な展開を予想して
朝礼の内容はひとつも入ってくることは無かった。

『康二くん？』
「…あ、何？どした？」
『いや、朝礼終わってもぼーっとしてるから』

二日酔い、そんなに酷いなら言いなね。

そんな彼女の気遣いまでもが、今は少し苦しいのも
どこまでも好きだという気持ちのせいなのがわかって
彼女に渡した物と同じコーヒーを1口、口に入れた。