Toxic Boy . (ページ12)

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＿＿＿＿やってしまった。

am.5:26。

猛烈な喉の乾きを覚えて目を覚ますと、
見慣れない天井、広いベッド
そしてなにより、隣で眠る深澤さんの姿。

待って、待ってよちょっと。
いやいや、そんな事あるはずない、そんな訳はない。
服は着ている。いやでも、彼がご丁寧に着せたとしたら？

…そんな事、あってはならない。

昨日、酷く酔っ払ったのを覚えている。
彼からの唐突なキスが絶えず振ってきて
そんなもの経験したことの無い私は
ただでさえ酔いが回っている頭も、更に回らなくなって。

記憶が確かなのはそこまでだ。

とにかく、このまま出勤する訳にはいかない。
隣で眠る彼を起こさないようにベットから出ると
荷物を全て持ったことを確認して、早足でホテルを出た。

・

・

「A、昨日大丈夫やったか？」
『…へっ！？』
「俺送ってくれた後やん、ちゃんと帰れたん？」

俺さすがに二日酔いやわ、といいつつ
少し早めに出勤してきた康二くん。
私も帰宅してシャワーを浴びた後
もう一度寝る時間も、そんな気持ちすらもわかなくて
いつもより早く出社した。

エントランスを通る時
昨日一緒に''彼''と過ごす予定だった
受付の彼女の視線が痛かったのは言うまでもない。

「…なあ、どしたん？なんかあったん？」
『なっ！なんもないよ！私も酔って、すぐ帰ったし』
「それならええんやけど」

康二くんはどこか納得しない様子だったけど
無理に聞き出すようなことはしない人だ。
なんかあったら言うてな、と
コンビニで買ってきたであろう缶コーヒーを渡してくれた。

それを開けて1口飲む。
苦味があるこの味が今はちょうど良い。

(…深澤さんと、キス、した)

残念ながら、あれは夢では無い。
最初は触れ合うだけだった唇が、どんどんと深くなって
酔っ払った女ごときの力では抵抗すら出来なかった。

ギュッと瞑っていた目を開いた時
彼の飢えたような視線と絡んで。

『〜〜〜〜っ！！！』
「Aちゃん、どしたの？」
『いやっ！！なんでも！！』
「あはは！変なの」
「大声なんか出して珍しいな」

1人、思い出して頭を抱え込んだ所を
出社してきた佐久間さんに見られて笑われる始末。
珍しく大声を出したことに
一緒に来た岩本さんもびっくりした様子で席へと向かった。

「はよ〜」
「うーわ、ふっかさん」
「なによ、その顔はぁ」
「二日酔いやもん、最悪やで」

その直後、聞こえてきたその声がやけにまとわりついて
見なくても自分の顔に熱が集まるのが分かった。