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『…あは、なんてね?』
少し流れた気まずい空気が苦しくて、声を出したのは私。
ダメダメ、この気持ちは隠すって決めたもん。
…私はタダの幼なじでいなきゃ。
水道を閉めて手を拭いて、振り向こうとした瞬間。
「…子どもだよ、Aは」
いつの間にか、亮平くんの腕の中にいて。
後ろから回った腕は、私の首の前で結ばれている。
『…亮平くん』
「それやだ。他人みたいに呼ばないで」
『離してよ、もう、何してるの?』
「…ほんとに分かってんの?」
細いのに、力強い腕が私の肩を引いて
冷蔵庫に肩をぶつけた。目の前には、綺麗な亮平くんの顔。
「…子どもじゃないんでしょ?」
『…んっ』
最初は啄むように塞がれた唇。
それは段々、いつも冷静な彼とは違って貪るように変わって。
『…亮平、く』
「そうやって呼ぶなら、やめない」
『…りょう、ちゃん』
そう呼ぶと、やっと止まったキス。…なんで?どうして?
誰にでも、こういうこと…するの?
「子どもでいてよ。俺の知らないAには、ならないで」
なのに何故か、苦しそうな顔した彼がいる。
「…俺だけに見せてよ、その顔も」
そんはのまるで、私の事が好きみたい。
『りょうちゃん…』
「好き。ずっと前から。Aのご飯も好きだけど、Aが好き」
そう言って抱きしめられた身体。
信じられないほど強いのに、どこか優しい。
彼特有の、柔らかい柑橘系の香りが鼻をかすめる。
『…私も、好きだよ』
そんなりょうちゃんに、やっぱり嘘は付けなくて。
「…A、本当?」
『うん、ずっと…昔から、りょうちゃんが好き』
だからご飯も作るのを口実にして、会いたかったの。と
ちょっとずるい自分の事は、嫌い。
「…嬉しい。じゃあ、食べてもいい?」
『え、ご飯?さっき食べたのに?』
「ううん、違うよ」
____次食べるのは、Aの事。
返事する前に、また塞がった唇。
…それ、言っても許されるのはりょうちゃんだけだよ。
(じゃあ、いただきまーす)
(…美味しくなかったら、ごめんなさい)
(んーん?俺がいっちばん大好きな味だよ、きっと)
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作者名:蒼 | 作成日時:2024年2月25日 20時