green ページ42
「うん、おいしい」
『そっか、よかったあ』
私の作ったハンバーグをモグモグと食べるのは5つ年上の亮平くん。
昔から勉強好きで、集中するとご飯食べないんだよね、と
ポツリと話した幼なじみで、そのご飯係に立候補したのは私。
仕事柄いつもバラバラの時間に帰ってくる彼。
今日はたまたま早く帰れて、一緒にご飯を食べた。
「いつもありがと。ごめんね仕事終わりなのに」
『ううん、全然』
…だって、これは一緒にいたいっていう口実だもん。
有難いことに料理は得意で、
毎回美味しいと笑ってくれる亮平くん。
(…彼女が、もし出来たら)
もう、この役目も担当できなくなるのかな。
カチャ、とフライパンを洗う手が止まる。
いつも背筋を伸ばしてお箸を持って、
綺麗に食事する姿が印象的。、
そういう繊細な彼に、おもわず見とれてしまう
……そりゃ、亮平くんを好きな女の子はたくさんいるよね。
当たり前だ。だって、アイドルだもん。
勉強出来て、優しくて、かっこよくて、
女の子の扱いだって完璧で。
クイズ番組に向けて毎日勉強を欠かさない。
次はこの試験受けるんだ、と見せてくれても
…馬鹿な私には到底分からないのが残念だけど。
「んー、今日も美味しかったあ」
『お粗末さまでした』
隣に来て、食器を洗い出したから思わずとめた。
『ちょ』
「え？なに？」
『いいよ、休んでなよ』
「なんでよ。これくらいさせて？」
俺ん家だし、と強引にスポンジを取って洗い始める。
…意外と頑固。そこも、すきだけど。
「やっぱりAのご飯、好きだなあ」
ポツリとつぶやく言葉に、ときめく胸。
……いやいや、ご飯が、だから。
しかもグループでも有名な''あざとい王子''ですから、この人。
『あは、それはよかった』
「あ、ドキドキした？分かりやすいなあ」
そして案外、勘がいい。
『す、するわけないでしょ！何言ってるの』
「え〜？ふふ、残念」
残念なんて思ってないくせに。
たまたま幼なじみだっただけ。
でも私はアイドルとしての亮平くんじゃなくて、
幼なじみの、亮平くんが好きで。
「てか、最近呼ばないね」
『え？』
「りょうちゃんって。昔はよく言ってたでしょ？」
……それも私なりの、ケジメだもん。
『言わないよ、子どもじゃないから』
「俺からしたら変わんないけどなあ」
『…私もう、子どもじゃないよ』
真剣に答えると、少し驚いたような顔をした。
変わらない妹扱いも、段々苦しくて
少しでも大人びたくて、呼び方も変えたんだよ。
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作者名：蒼 | 作成日時：2024年2月25日 20時
