9 つの朝顔 (ページ37)

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(R side)

「なあA！見て！」
『あは、何ですかコレ』
「俺が撮ったふっかさんのオフショ！ぶっさいくやろ」
「おい康二！やめろよ！」
「にゃは！俺にも見せてー！」

久しぶりの9人の楽屋は騒がしい。いつもの如くドラマ班の3人は話が尽きないし、岩本くんと舘さんは隅で舞台について真面目そうな話をしている。
翔太くんと阿部ちゃんはみんなの姿を微笑ましく見ながら笑ってて、ラウールは主演映画の台本と睨めっこだ。

(…久々に会えたんだけどな)

そんな俺たちの中に、1人混ざってる彼女。
いわゆるカメラマンだ。ファンの人達に向けて俺たちのオフショットを撮ってくれる人。
カメラ繋がりで康二とは仲が良いらしく、よく写真の話をしたり、カメラを見せあったりしていて。

「…俺は入れないんだよなー」
「めめなんか言った？」
「いや、なんも」

そんなことをボヤくと、勘のいい阿部ちゃんは
あー…と言いながら康二と彼女の方を見つめた。

「めめってさ、ほんとに分かりやすいんだね」
「…やっぱ？」
「うん、いっつも目で追ってるよ」

楽屋以外では気をつけないとね、とにっこりスマイル。

『じゃあ今日も適当に撮ってくので…気にしないでリハしてください』

そんな時、一際高いその声が部屋に響く。自前のカメラを組みたてて、ストラップを細い肩に掛けた。
迫っているライブのリハーサル。すぐに空気は切り替わって、少しピリッと張り詰める。

「…っ」

その真剣な顔つきに、カメラ越しに刺さる綺麗な目。
俺は、このAさんの視線に弱い。

『深澤さん、変顔はダメですよ〜』
「あは、バレた」
『本当はカッコイイんだから』
「やだ！もしかしておじさんナンパされてる？」

そんなやり取りができるふっかさんの事も正直羨ましい。
…じっと見つめてしまうは言いものの、まともに会話したこともない。
名前すら、みんなはちゃん付けだったり呼び捨てだったりフランクに呼んでるのに、俺だけずっとさん付けだ。

(…クッソ、負けたくねえ)

変な意地だけはあるのに、距離を詰めて嫌われることのほうが怖い。気持ちを隠すのは苦手だ。

カメラを構えた時の真剣な顔。
なのに普段のふわふわとした優しい雰囲気に
まんまと恋に落ちたのは俺だった。

「…あの」
『はいっ!?』

思い切ってその後ろ姿に声をかけると、まんまるな目。
俺からこうして話しかけたのは初めてだ。

「俺の事、撮ってください」
『目黒、さん？』

そして零れたのは、ワガママすぎる本音。