9 つの朝顔 (ページ34)

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blue ページ34

『もう翔太なんか知らない』
「あっそ」
『…何、その言い方』
「は？吹っかけたのはそっちじゃん」

こんなやり取りをしたのはもう三日前。
原因は彼が、テレビに映る女優さんにデレッデレだったせい。
…分かってる、別にそんなの今更だし、今まで嫉妬したことも特になかった。

だけどその日はなんか腹が立って。
その番組内でその女優さんが恋愛観の話をしていた時。
寝室は別がいいとか、干渉しすぎは嫌だとか、価値観が彼と似ている部分が沢山あって。
それを見た翔太が、こういう子がタイプ！やら、かわいい〜！やらあからさまにデレデレするもんだから
じゃあこういう人と付き合えば？と怒ってしまった私のせい…なんだけど。

『だってさあ〜〜〜女優さんに勝てるわけないじゃん〜〜〜…』

そう言って今日、居酒屋でビール片手に半泣き状態の酔っぱらいが出来上がってるわけで。

「翔太はそういう所素直だからね」

目の前には、優しく励ましてくれる阿部ちゃん。

『……私じゃダメなのかなあ』

彼はアイドルだし、私はただのパンピーだ。
出会ったのは番組収録。私は当時スタッフで、現場が重なる度に仲良くなり、勇気を出して私から告白したのが奇跡的に成功した。その繋がりもあって、阿部ちゃんとは友達として特に仲がいい。告白する前相談してたのも、阿部ちゃんだった。

「んー。案外、安心していいと思うけど」
『無理だよ…優しさで付き合ってくれてるだけかもしれない』
「Aはほんとに自信無いよね、告白の時もそうだったけど」

あるわけがない。今や大スターだもん、訳が違う。
だってあの喧嘩から3日たっても、連絡なんか来ることもない。どうでもいいと思われてるって、感じるのも仕方ないじゃん。

「あ」
『…なに？』
「いいこと思いついちゃった〜」

お得意のあざとい悪戯顔。私より確実に可愛いと思う。
ちょいちょい、と手招きされて、そちらに顔を寄せた。

「えい」

その瞬間、すかさず聞こえたシャッター音。
その携帯画面に映るのは、テーブル越しとはいえ距離の近い私と阿部ちゃんの姿。

『写真撮るなら、言ってくれたらいいのに』
「んー？これはこーすんの。えい」

しゅぽんと聞きなれた音と同時に、どこかのトークに送られたそれ。…待って、人数が9ってことは、そのトークルームって。

【え！？Aちゃん！？久しぶりにみた！(^^)】
【阿部ちゃんとまさかのサシ？仲良いねー‼️わら】

それに、すぐに反応するメンバー達。