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『そっ、そんなのないです』
「ほんと？」
『本当です、第一タレントとマネージャーだし、佐久間さんと趣味の話は良くするけど、好きとか恋とかじゃなくて』
俺の顔を恥ずかしくて見れないのか、下を向いたままキョロキョロしている。
否定した事にホッとしつつ、じゃああの距離感、余計許せねーんだけど。
『…わ、』
なんだか無性に腹が立って、腕を引いて抱きしめた。グループの中では至って平均的な身長だけど、彼女の身体は俺の中にすっぽり収まって。
「…じゃ、俺は？」
『…え？』
「俺のことは、どう思うの」
真剣な声で聞く。だってさ、俺には結構クールというか、距離感あるというか。もしかして嫌われてんのかな、とか考えるわけよ。
だけど、俺の背中をきゅっと掴んで、小さな声で答えた。
『…嫌いじゃ、無いです』
「じゃ、フツー？」
『〜〜〜〜っ…』
意地悪な聞き方だと思う。でもいいよね。さっきの見て、深澤さんちょっと怒ってるから。
「…ね、答えて」
俺はね、その声から聞きたいの。俺の方が何倍もAちゃんのこと好きだけど、その口から言って欲しいの。
だって、俺の背中に手回したってことは…そういう事っしょ？
『…好き、です、深澤さん』
かすかに聞こえた声。心の中でガッツポーズ。え、死ぬほど嬉しいんだけど。
その目を見つめて、キスしようとしたけど…辞めた。
ここ楽屋だし…扉の向こうから、小さく話し声聞こえるし。アイツら聞き耳立ててんな。
「ね、耳貸して」
『耳？』
だけどちゃんと、俺からも。言わせといて言わないってのは、ちょっと意地悪すぎるでしょ？
「俺ね、Aちゃんがめっちゃ好き。今すぐ、ちゅーしたいくらい」
2人にしか聞こえないように耳元でつぶやくと、また赤くなった顔。そーやって、他の奴じゃなくて俺の事ばっか考えててよ。俺がAちゃんに翻弄されまくったみたいに、俺に翻弄されてよ。
やっぱりキスもしたいとこだけど、ここではお預けね。
「でも、いっつも俺には冷たかったよねー」
『あっ、あれは…顔に出ちゃうから、隠そうと思って』
「顔？」
「…深澤さん見ると、嬉しくてニヤニヤしちゃうから」
やっぱ撤回。可愛すぎんだもん。
1回だけ、キスしちゃおっと。
(Aちゃん…�犒�の彼氏になりたい��)
(上手いように、言わないでくださいよ)
(あは、でも本心だもん、特別ね。)
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作者名：蒼 | 作成日時：2024年2月25日 20時
