purple ページ31
基本的に、追いかける恋愛は好きじゃない。
好きになることはあっても告白はされたいし、基本的には全て受け身でいたいし。
ストライクゾーンも広いせいで、告白されてまあイケるかなって思ったらすぐ付き合うし。
そんな俺が今、何とも珍しく片思い中。
「Aちゃーん」
『すみません、今、忙しいので』
「え〜…」
楽屋でバタバタと走り回る彼女を呼んでも、こんな感じで相手にすらされない。マネージャーだもん。忙しいよね。
…いやでもさ、俺、お兄さんですけど？Aちゃんより年上ですけど？
そんな俺を横目にケラケラ笑う翔太に目が行く。お前なあ。
「ねーAちゃん！」
『なんですか？』
「このアニメ見た！？めっちゃおもろくね！？」
そんな彼女は、悔しいことに佐久間と話が合うようで。
俺の呼び掛けにはビクともしなかったくせに、佐久間に呼ばれた瞬間トコトコとそちらへ駆け寄った。…んだよ、佐久間には呼ばれたら行くのかよ。
鏡越しに見ると、今にもくっつきそうな勢いで寄り添って画面をのぞき込む2人。ちょいちょい。
「さっきから顔芸すんのやめてよ」
「はっ！？してないけど！？」
「ねえ、うるさい」
サイドに座る阿部ちゃんと舘様すらこんな扱い。俺、泣いちゃうわ。
「ここのシーンがさ、はちゃめちゃいいのよ」
『わかります…素晴らしいですよね作画も…』
「んね！！やっぱ分かり合えるオタク最高だわ」
Aちゃんなら宮田一派いけるね！なんて馴れ馴れしく彼女の頭を撫でるものだから、今すぐ後ろから叩いてやりたい。
「ふっかさん顔に出てるよ。落ち着いてよ」
「ラウまでそんなこと言うの…」
「バレバレで面白いけどね。いつもの余裕はどこいったの？」
ラウールにまでそう言われると、俺ってそんなに分かりやすいのかなと心配になる。
『あ。向井さん、これなんですけど』
「どれ？」
9人もいると楽屋はうるさいのなんのって。でもそんな中でも彼女の声はいち早く拾ってしまうというか、気にしちゃうというか。
(…振り回されすぎでしょ、俺)
こんなにも恋愛は人を変えるのかと、頭を抱えたい気持ち。
好きになるきっかけなんて簡単だ。自分が分からなくなって、1人で落ち込んでいた時。まだマネージャーになりたてだった彼女が飲み物片手に言ってくれた言葉。
�狄爵靴気鵑呂修里泙泙如⊇縞�魅力的です��
真っ直ぐすぎて恥ずかしい程の言葉で、俺の悩みをすとんと消してくれたのは彼女だ。その瞬間に、恋に落ちた。
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作者名：蒼 | 作成日時：2024年2月25日 20時
