9 つの朝顔 (ページ26)

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『…ヤバい』

体重計の数値を見て、唖然とした。

男から見ても惚れ惚れする身体。色んな雑誌や媒体でその筋肉を取り上げられている彼氏、照くんは私も驚くほど甘党で。

「俺これ食べたいかも」
『チョコケーキ？美味しそう』
「…半分こしよ、Aのと」
『ふふ、いいよ』

こんなやり取りをして、昨日も食べたあまいケーキ。

『…さすがに、ダイエットしないと』

原因はわかる。鍛えてる照くんとは違って私は筋トレする訳でも、制限してた訳でもない。
…そりゃ、体重計の数値もこうなる訳だ。

甘いもの大好きな照くんには、言えない。
黙って1人、ダイエットを決意したんだけど。

「あれ、Aのご飯それだけ？」
『うん、あんまりお腹空いてないから』
「…具合悪いの？」
『大丈夫、元気だよ』

ちょっと怖い見た目とは裏腹に、しゅんとした顔で心配そうにする照くんの頭を、背伸びして撫でた。

ひとくち食べる度に、うま！と言ってくれる照くん。
そんなかわいい姿見てたら、自分も食べた気になれるもん。

とりあえず、1週間。1週間我慢したら多少は戻るでしょ。

完璧な彼の隣に立つなら、やっぱり少しでも綺麗でいたい。
そんな気持ちで始めたダイエット3日目の夜の事。

「ねえ、やっぱおかしいでしょ」
『何が？』
「ご飯の量。だんだん減ってるし、今日なんかスープだけじゃん」

ご飯できたよと彼を呼ぶと、見事に痛いところをつかれてしまった。

『お腹、空いてない』
「嘘つけ、さっき腹鳴らしてたくせに」
『うっ…ほんとだもん』
「ねえ、俺に何隠してんの？」

少し起こったような顔でじっと見つめられると、弱い。

「…俺に、言えないようなことなの？」

…そんな顔させてまで心配させたくないし、流石に隠せないかな。諦めて、照くんに向き合うように立って説明する。

『…あのね、太ったの』
「…は？」
『だから！太っちゃったの！』

だからご飯我慢してたの、と耐えきれず俯くと
上からふは、と気の抜けた笑い声が聞こえた。

『だから言いたくなかったのに…』
「あはは、ごめんごめん」

今日はぽんぽんと私の頭を撫でる。
恥ずかしいから、黙ってたかったのに。